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【拡散炉の買取】半導体製造装置売却ガイド

初心者でも失敗しない拡散炉の売却マニュアル

研究テーマが終わった、設備更新をする、ラボ移転が決まった。そんなタイミングで目の前に立ちはだかるのが、大きくて重たくて少し近寄りがたい装置、拡散炉です。

大学研究室や半導体系スタートアップ・ベンチャーの担当者からは、次のような声をよく聞きます。

「拡散炉は産廃として捨てるしかないと思っていた」
「中古市場があることは何となく知っているが、どう動けばいいか分からない」
「解体業者と話が進んでしまっているが、その前に拡散炉の買取業者を探した方がよいのか悩んでいる」

実は、拡散炉は半導体装置の中でも中古市場での需要が安定しているカテゴリーのひとつです。スクラップにしてしまう前に、一度「拡散炉の買取業者」という選択肢を知っておくだけで、処分コストが抑えられたり、場合によってはプラスの資金を研究や次の投資に回せる可能性があります。

このガイドでは、中古流通に詳しくない方でも理解できるように、拡散炉の基礎から種類、メーカーと代表機種、中古需要、相場の考え方、高額査定のポイント、トラブル回避、搬出の注意点、そして実際の売却の流れまでを順を追って解説します。


1. 拡散炉とはどんな装置か

拡散炉は、シリコンウエハーを高温に加熱し、不純物拡散、酸化、アニールなどの熱処理を行う装置です。シリコンウエハーをボートに載せて炉心管(石英管)の中に入れ、酸素や窒素などの雰囲気ガスを流しながら、数百℃から千数百℃の温度で処理します。

役割としては、次のような工程を担います。

・拡散:ボロンやリンなどの不純物をシリコン内部に拡散させてPN接合を形成する工程
・酸化:シリコン表面にシリコン酸化膜(SiO₂)を形成する工程
・アニール:イオン注入後のダメージ回復などを行う熱処理工程

ロジックやメモリだけでなく、パワーデバイス、イメージセンサー、MEMS、アナログICなど、多くのデバイスで基本工程として使われ続けており、「最先端ではないが、なくなることもない」典型的な装置と言えます。


2. 拡散炉の種類と代表的なメーカー・機種

拡散炉と言っても、構造や用途によっていくつかのタイプに分かれます。種類ごとに中古市場での扱われ方も変わるため、ざっくりとでも自分の装置がどのタイプにあたるかを把握しておくと査定依頼がスムーズです。

縦型拡散炉(バーチカル炉)

ウエハーのボートを縦方向に出し入れするタイプです。200mmラインなどの量産工場で主流となっており、省スペースで温度均一性に優れています。多ゾーンヒーター構成になっているモデルも多く、高さのある筐体が特徴です。

横型拡散炉(ホリゾンタル炉)

ウエハーのボートを横方向から炉心管に挿入するタイプです。古くから使われている形式で、150mmラインや大学・研究室、パイロットラインなどで今も現役です。構造が比較的シンプルで、研究用途向け中古装置としても一定の人気があります。

研究用小型拡散炉

少量のウエハーやサンプルを処理するための小型炉です。縦型・横型の区別というより、1本の石英管に少数枚を処理するシンプル構成が多く、大学・公的研究機関やベンチャー企業のラボでよく見られます。新品価格が高いため、中古で探している研究室も少なくありません。

代表的なメーカーと機種の例

拡散炉は多くのメーカーから販売されてきましたが、中古市場でよく名前が挙がるのは次のようなメーカーです。

国内系メーカー:

Kokusai Electric(旧 日立国際電気)、東京エレクトロン、アルバック系、TSK系などの縦型・横型拡散炉各シリーズ

海外系メーカー:

サームコ、Centrotherm、テンプレス・システムズ、アプライド・マテリアルズ、ASMインターナショナル、SVG系の旧モデルなど

研究用メーカー:

小型拡散炉を扱う国内外のラボ用装置メーカー

型式としては縦型であれば複数ゾーンを持つ量産設備、横型であれば1〜3本炉構成の汎用機、研究用であれば簡易な温度コントローラ付き炉体などが代表的です。型式が分からなくても、銘板の写真と全体写真があれば、買取側である程度特定できます。


3. 拡散炉の中古市場と需要

では、実際に拡散炉のリユース需要はどの程度あるのでしょうか。結論から言うと、装置の世代や仕様によって強弱はあるものの、国内外ともに安定したニーズがあります。

国内では、先端ロジックのような最新ノードに比べると、パワーデバイス、アナログ、センサー、MEMSなどの分野では150mm〜200mmラインが今も現役です。こうしたラインでは、拡散炉の故障や増設に際して、中古拡散炉を活用するケースがあります。新品設備は高額で納期も長いことが多く、「同等世代の中古拡散炉があるなら検討したい」というニーズが背景にあります。

海外では、東南アジアやインドなど、これから半導体生産を拡大していく地域で中古拡散炉の需要が続いています。先進国で役目を終えた拡散炉が、条件さえ合えば海外で第二の人生を送るイメージです。量産用途だけでなく、大学や技術教育機関向けの装置としても活用されることがあります。

大学やスタートアップから出てくる拡散炉は、量産工場と比較すると稼働時間が短く、内部が比較的きれいな場合も多いため、状態次第では中古市場で好意的に受け止められることも少なくありません。


4. 拡散炉の相場レンジの考え方

拡散炉の相場を決める要素は多く、具体的な金額は装置ごとに大きく異なりますが、傾向レベルでは次のように整理できます。

まず、年式と世代です。導入から10年前後の縦型拡散炉で、200mm対応のモデルは、今も現行ラインでそのまま使えるケースが多く、相場レンジは比較的高いゾーンに入りやすくなります。

一方で、導入から15〜20年以上経過した横型拡散炉や古い縦型拡散炉は、国内の量産ライン向けとしては選択肢から外れやすくなりますが、研究用途や海外向け、あるいは部品取り用途として需要が残ることがあります。相場レンジは下がりますが、「完全なゼロ」になるとは限りません。

研究用の小型拡散炉は、新品価格に対して中古でもそれなりの価格帯を維持しやすい装置です。これは「小型炉を新品で導入するより、中古でまず試したい」という研究室が一定数存在するためです。

また、炉本体単体の評価に加え、ガス供給ユニットや排ガス処理設備とセットで評価される場合もあります。装置一式として移設できる構成になっている場合、相場レンジが一段上がることもあります。


5. 高額査定になるポイント

同じ拡散炉の売却でも、装置の状態や付属設備の有無によって査定結果は大きく変わります。高額査定につながりやすいポイントを整理してみます。

比較的新しい世代であること

縦型で200mm対応、制御系が現行OSで動作しているなど、「今のラインにそのまま載せ替えやすい世代」の拡散炉は評価が高くなります。

保守・メンテナンス記録が残っていること

メーカーや保全チームによる定期点検履歴、部品交換履歴が残っている装置は、中古市場において安心材料となり、プラス評価につながりやすくなります。

周辺設備が揃っていること

炉本体だけでなく、ガス供給ユニット、排ガス処理装置、制御PCなどがセットで揃っている場合、「ライン一式」として評価できるため、査定額が上振れすることがあります。

稼働停止から時間が経ちすぎていないこと

長期間電源を入れていない装置は、再立ち上げ時のリスクが高まります。ここ数年以内まで稼働していた拡散炉であれば、その分評価がしやすくなります。


6. 売却前チェックリスト

拡散炉の査定依頼をする前に、最低限確認しておくとスムーズなポイントをまとめます。細かく準備しすぎる必要はありませんが、次の項目だけでも押さえておくと、やり取りの手間と時間がぐっと減ります。

まず、銘板の情報です。メーカー名、型式、製造番号、電源仕様などが記載されているプレートを見つけ、スマートフォンでアップの写真を撮っておきます。

次に、装置全体の写真です。前面からの全景、側面、背面、ローディング側など、何枚か撮影しておくと、構成や付属設備がわかりやすくなります。

また、動作状況も簡単に整理しておきます。現在も稼働中なのか、停止している場合は最後に動かしたのはいつ頃か、故障箇所があれば大まかな内容を記録しておきます。

さらに、設置状況も重要です。設置階数、搬出に使えそうな扉の幅と高さ、廊下の幅、エレベーターの有無などを分かる範囲でメモにしておくと、搬出計画の検討がスムーズになります。


7. 買取時の注意点

拡散炉のリユースでは、査定額だけでなく、安全とスケジュールの両面に注意が必要です。

まず、安全面です。拡散炉にはガス配管や高温部、排ガス系などがあり、停止や撤去の手順を誤ると、事故やトラブルにつながりかねません。装置を止めるとき、配管を外すときには、必ず安全管理担当や設備担当と相談し、必要であれば買取業者側の技術スタッフにも立ち会ってもらうのが安心です。

次に、解体業者との役割分担です。先に解体業者だけでガス配管やダクトを切断してしまうと、装置の価値が下がるだけでなく、後から買取業者が作業しにくくなる場合があります。理想は、「買取業者を先に入れて査定と撤去方針を決め、その方針に合わせて解体業者が動く」流れです。

また、移転や建物解体のスケジュールが決まっている場合には、査定から搬出完了までのリードタイムも重要な要素となります。時間的な余裕が少ないほど選択肢が狭まるため、「処分しなきゃ」と思った段階で早めに相談することが、結果としてトラブル回避につながります。


8. よくあるトラブル事例と回避策

現場でよく起きるトラブルを、いくつか具体的に挙げておきます。事前に知っておくだけでも、同じ失敗を避けやすくなります。

周辺設備を先に廃棄してしまったケース

排ガス処理装置やガス供給ユニット、制御PCなどを別途産廃として処分してしまい、炉本体だけが残ってしまったケースがあります。この場合、装置としての価値は残るものの、ライン一式としての魅力が下がり、査定額が想定より低くなりがちです。拡散炉の売却を検討し始めた段階で、「周辺設備も含めて一度査定にかける」という意識を持つことが大切です。

解体業者が先行して配管を切断してしまったケース

建屋解体のスケジュールが優先され、解体業者がガス配管やダクトを先に切断してしまい、その後の搬出が難しくなった事例もあります。こうなると、安全面の確認に手間が増え、買取側も慎重にならざるを得ません。事前に「この拡散炉は買取相談中なので、勝手に触らないでほしい」と関係者に共有しておくことが有効です。

搬出経路が当日になってから問題になるケース

実際に移動させてみたら扉を通らない、エレベーターの積載重量を超えている、といった問題が当日発覚すると、追加のクレーン手配や分解作業が必要になり、コストも時間も余計にかかります。簡易なメジャーで構わないので、事前に扉幅や天井高さ、エレベーターの寸法と荷重を確認しておくことで、多くのトラブルは予防できます。


9. 搬出・撤去の注意点

拡散炉の搬出は、「売買契約が決まったら終わり」ではなく、現場での作業が完了して初めて成立します。そのため、撤去作業の難易度も含めてイメージしておくことが重要です。

クリーンルーム内に設置されている場合は、防塵対策や他装置への影響を最小化するための養生が必要です。現場によっては、作業可能な時間帯や通行経路が細かく決められていることもあり、経験の少ない業者だけで対応すると現場調整に苦労することがあります。

大学や研究施設では、エレベーターが小さい、廊下が狭い、階段が多いといった物理的制約もよく見られます。このような環境では、現場で炉を部分的に分解して搬出する、窓からクレーンで吊り出す、といった工法が検討されます。どの方法が最適かは装置と建物の条件次第なので、中古半導体装置の搬出経験が豊富な業者に任せるのが安全です。


10. 故障・古い拡散炉でも売れるか

ここまで読んで、「うちの拡散炉はかなり古いし、故障もあるので無理かもしれない」と感じた方もいるかもしれません。しかし、中古市場の現場感覚としては、「古いから即スクラップ」とは限りません。

たとえば、加熱ゾーンの一部に不具合がある場合でも、部品取り用途として価値が残ることがあります。石英管やボート、制御ユニット、配線部品など、まだまだ使える部分を活かしたいバイヤーも存在します。

また、導入から20年以上経っている横型拡散炉であっても、海外の教育機関や研究用途、プロセス開発用としてニーズがあるケースもあります。もちろん、需要が強い世代とそうでない世代の差はありますが、「どうせ価値はゼロだろう」と判断してしまう前に、一度査定にかけてみることをおすすめします。


11. 拡散炉売却の基本的な流れ

最後に、拡散炉の売却を進める際のおおまかな流れをまとめておきます。

最初のステップは、銘板と装置全体の写真を撮影し、メールやフォームから買取業者に送ることです。この段階で、年式や仕様、動作状況などの簡単な情報も伝えておきます。

次に、その情報をもとに概算の相場レンジが提示されます。この時点ではあくまで目安ですが、「スクラップコストと比較してどうか」「売却の手間に見合うか」といった判断材料になります。

概算査定に納得できそうであれば、現地下見に進みます。現場で装置状態と搬出条件を確認し、その結果を踏まえて正式な買取金額と撤去方法、スケジュールが提案されます。

条件に合意すれば契約を締結し、その後、決められた日程で搬出・撤去作業が行われます。作業完了後、合意した条件に従って入金が行われる、という流れが一般的です。

拡散炉の売却や処分は、多くの方にとって一生に何度も経験するものではありません。だからこそ、「とりあえず銘板と全体写真を送ってみる」という小さな一歩から始めてみてください。スクラップ処分だけで終わらせてしまう前に、中古として生かす選択肢があるかどうか、一緒に検討していきましょう。