※本記事に登場する事例は、守秘義務の観点から大幅にフィクション化したモデルケースです。
売上は維持している。
受注も途切れていない。
でも、決算書を見ると、営業利益率が年々下がっている。
原因は明確だ。
材料費が上がり、電力費が上がり、外注費も上がっている。
それを価格に転嫁できればいいが、取引先からは「他社も同じ条件だ」と言われる。
最近では、価格転嫁が十分にできない企業もあるという声があります。
経理担当者が決算書を見直したとき、ある項目に目が止まった。
固定費。
その中に、立旋盤の減価償却費、保守費、電力費が含まれている。
「この設備、本当に利益を生んでいるのか」
経営会議で、その問いが出た。
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立旋盤は本当に黒字を生んでいるか
多くの工場では、設備単体の採算を細かく見ていません。
「稼働している」
「受注がある」
だから、利益は出ているはずだ。
そう思い込んでいるケースは少なくありません。
でも、実際には違います。
減価償却が終わっていても、固定費は存在します。
・電力費(待機電力含む)
・保守費(定期点検、部品交換)
・床面積コスト(固定資産税相当)
・人件費(段取り・操作に充てた時間)
これらを合計すると、月数十万円規模になることもあります。
“動いている=利益が出ている”ではない理由
たとえば、立旋盤が月に5日稼働しているとします。
売上は月100万円。
材料費、外注費、直接人件費を引くと、粗利は40万円。
一見、黒字に見えます。
でも、ここに固定費を割り当てるとどうなるでしょうか。
・電力費(基本料金含む) 10万円
・保守費 5万円
・床面積コスト 3万円
・段取り人件費 15万円
合計33万円。
粗利40万円 – 固定費33万円 = 営業利益7万円
稼働率が低いと、固定費の重みが増します。
最近では、電力コスト上昇が加工業に影響しているという見方もあります。
原材料価格の高止まりを懸念する声もあります。
こうした環境では、設備別損益で見ることが重要です。
判断軸は、「動いているかどうか」ではなく、「利益を生んでいるかどうか」です。
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粗利が崩れたときに起きる固定費の重み
粗利が安定していれば、固定費は気になりません。
でも、粗利が崩れたとき、固定費の重みが一気に顕在化します。
たとえば、こんな状況です。
・材料価格が20%上昇
・電力コストが15%増加
・価格転嫁は5%しかできない
結果として、粗利率が30%から20%に低下します。
売上1,000万円の工場の場合:
以前
売上1,000万円 – 変動費700万円 = 粗利300万円
粗利300万円 – 固定費200万円 = 営業利益100万円
現在
売上1,000万円 – 変動費800万円 = 粗利200万円
粗利200万円 – 固定費200万円 = 営業利益0円
売上があっても、資金が残らない。
これが、粗利が崩れたときの現実です。
正直に言うと、この状況で固定費を見直さないと、赤字転落します。
判断すべきは、変動費と固定費のバランスです。
変動費は受注に応じて変動します。
でも、固定費は受注の有無に関わらず発生します。
粗利が不安定になったとき、まず見直すべきは固定費構造です。
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売却を考えるとき、多くの企業が迷う理由
「まだ仕事はある」
「主力設備だった」
「対外的なイメージが悪くならないか」
だから売却には踏み切れない。この感覚は、理解できます。
でも、見るべきは以下の3点です。
・3年後の受注構造
大型案件は今後も安定して来るのか?
・外注との比較
外注費と社内加工費(固定費含む)のどちらが合理的か?
・稼働率の安定性
月数日の稼働で固定費を回収できるのか?
ここを冷静に整理すると、答えは出ます。
たとえば、こんな状況になっていないでしょうか。
・立旋盤の稼働は月5日程度
・外注に出せば1件あたり30万円
・社内加工費は固定費込みで40万円
この場合、外注のほうが合理的です。
「主力設備だから」という感情ではなく、財務合理性で判断する。
それが、粗利が不安定な時代に求められる経営判断です。
設備投資を抑制する動きも一部で見られるという声もあります。
大型機は固定費負担が重いと感じる経営者もいます。
感情と財務を分けて考える。
それが、立旋盤の整理を検討するときの正しいスタンスです。
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【注意】大型機の価格構造を理解する
立旋盤を売却しようとしたとき、「思ったより安い」と感じることがあります。
でも、それは「安く見られている」わけではありません。
大型機には、構造的な価格形成の理由があります。
まず、再設置コストが高い。
買い手は、購入価格に加えて以下のコストを負担します。
・輸送費(特殊トレーラー、重量物搬送)
・据付工事費(基礎工事、アンカーボルト)
・精度調整費(芯出し、試運転)
合計で、購入価格と同程度かそれ以上になることもあります。
次に、輸送リスク。
分解・組立の過程で精度が狂うリスクがあります。
最後に、市場規模。
大型機を必要とする企業は限られています。
これらの要因により、中古価格は構造的に伸びにくくなります。
価格だけで判断せず、売却後の固定費軽減効果で考える。
それが、財務判断としての正しいアプローチです。
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【事例】固定費を軽くして財務体質を整えた決断
※守秘義務のため大幅にフィクション
地方のある産業機械部品メーカーは、売上横ばい、粗利低下に悩んでいました。
原材料価格の上昇、電力コストの増加、価格転嫁の限界。
決算書を見直したとき、立旋盤の固定費が目に留まりました。
立旋盤は月数日しか稼働していませんでした。
年間の受注は10件程度。
外注に出せば1件30万円、合計300万円。
一方、社内加工費は以下の通りでした。
・電力費 年120万円
・保守費 年60万円
・段取り人件費 年180万円
・床面積コスト 年40万円
合計400万円。
つまり、社内加工のほうが年100万円高いという現実がありました。
経営会議で議論した結果、立旋盤の売却を決断しました。
社内からは反対意見もありました。
「主力設備を手放すのか」
「技術力が落ちると思われないか」
でも、最終的には財務合理性を優先しました。
売却後、以下の効果が出ました。
・固定費が年400万円軽減
・資金繰りが安定
・外注先との分業体制により、納期対応力が向上
結論として、売却は資金難対策ではなく、財務再設計でした。
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まとめ|設備は”誇り”ではなく経営資源
立旋盤が悪いわけではありません。
技術力がないわけでもありません。
ただ、粗利構造が変われば、判断も変わります。
原材料価格の高騰、電力コストの上昇、価格転嫁の限界。
こうした環境では、固定費を軽くする選択肢を検討する必要があります。
設備は、誇りで持つものではありません。
経営資源として、最適配置を考えるべきです。
稼働していても、利益を生んでいないなら、整理する。
それは、撤退ではなく、財務体質の改善です。
感情と数字を分けて判断する。
設備別損益を見直す。
固定費構造を整理する。
それが、粗利が不安定な時代に求められる経営判断です。
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