取引先監査(工場監査/サプライヤ監査)が迫ると、「どこを見られる?」「何を直せば通る?」と不安になりますよね。特に工場長・製造責任者・品質責任者ほど、“管理できていない工場”と思われたくないはずです。
本記事では、監査官が見ている本質(品質より管理状態)を押さえたうえで、指摘されやすいポイントTOP10、そのまま使える監査チェックリスト(印刷可)、監査前7日間の是正スケジュール、さらに悩みがちな是正処置報告書(CAPA)の書き方まで、現場で即実行できる形でまとめます。
工場監査で見られる本質:「品質」より「管理状態」
結論から言うと、取引先監査(顧客監査・サプライヤ監査)で見られるのは「製品品質そのもの」より、品質を安定して出し続けるための管理状態です。
監査官は、現場の5S(整理・整頓・清掃・表示)やルール運用、記録(エビデンス)を見て、「この工場は再発防止できるか」「属人化していないか」を判断します。
つまり、監査は“現場が綺麗か”ではなく、
- ルールがあるか
- 守られているか
- 守られている証拠(記録)があるか
- 現場と書類の整合性が取れているか
を確認する場です。ここを外すと、対策してもズレます。
監査で指摘されやすいポイントTOP10
監査でよくある指摘事項(監査 指摘事項 例)を、現場目線でTOP10にまとめます。
- 通路・避難経路が塞がっている
→ 仮置き品、治具、梱包材が“ちょい置き”されているケースが頻出です。 - 表示がない/ラベルの意味が不明
→ 置場・在庫区分・ロット表示などが曖昧だと「管理していない」扱いになります。 - 不適合品・保留品の隔離不十分
→ OK品と混ざると信頼を落とします。隔離+表示+記録が必須です。 - ロット/トレサビリティが追えない
→ 「いつ誰がどの工程で作ったか」が追跡できないと重大指摘になりやすいです。 - 点検表・日常点検の未記入/後書き
→ 記録が薄い工場は疑われます。設備点検・測定器点検は重点。 - 教育記録・力量管理が曖昧
→ 作業者の訓練状況が不明だと「品質の再現性がない」と見られます。 - 治具・工具の管理不備(校正・保管)
→ 校正期限切れ、保管が雑、識別不可は定番指摘です。 - 油汚れ・切粉・粉塵の放置
→ 清掃不足は安全だけでなく「異物混入リスク」としても見られます。 - CAPA(是正処置)が形だけ
→ 再発防止に結びつかない報告書は、監査官が最も嫌うパターンです。 - 内部監査の未実施/形骸化
→ 取引先監査前に“自分たちで気付けていない”のは危険信号になります。
取引先監査 チェックリスト
以下は、工場監査 チェック項目として、そのまま印刷して使える形式です。各項目に「OK/NG/要是正/備考」を付けて運用してください。
5S(整理・整頓・清掃・表示)監査チェックリスト
- 不要物(使っていない治具・段ボール・端材)が作業エリアに残っていない
- 仮置きルール(場所・期間・表示)が決まっている
- 置場表示(棚番・区画線・定位置)があり、守られている
- 工具・治具は定位置管理され、欠品・放置がない
- 清掃基準(誰が・何を・頻度)が決まっている
- 清掃結果が見える(点検表/写真記録/チェック欄)
- ゴミ箱・廃棄物容器が溢れていない/分別表示がある
- 表示(ラベル)が読みやすく、意味が誰でも理解できる
安全(通路・避難経路)監査チェックリスト
- 通路幅が確保され、物が置かれていない
- 避難経路が明確で、障害物ゼロ(出口・消火設備周辺含む)
- 区画線(通路・置場)が明確で、薄れ・剥がれがない
- 脚立・台車・パレットの放置がない
- 転倒・挟まれ・切創リスクのある箇所に対策がある
- PPE(保護具)のルールと現場実態が一致している
- ヒヤリハット・安全教育の記録がある
品質(ロット・トレサビ・工程)監査チェックリスト
- 原材料〜出荷までのロット管理が追跡できる
- 工程内検査の基準と記録がある(抜け・後書きがない)
- 不適合品は隔離され、「赤札」等で識別されている
- 保留品の扱い(判断者・期限・処置)が明確
- 変更管理(材料・工程・治具・作業条件)が運用されている
- 作業標準書が現場にあり、実際に守られている
- 重要工程(特性管理)の管理点が明確(温度・圧力・トルク等)
記録(点検表・教育記録・是正履歴)監査チェックリスト
- 設備点検表(日常/定期)があり、未記入がない
- 測定器・ゲージの校正記録がある(期限切れゼロ)
- 作業者教育の記録(初回教育/変更教育/再教育)がある
- 不良・クレームの是正履歴が追える(CAPA台帳など)
- 内部監査の実施記録がある(指摘→是正→確認まで)
- 写真・記録が監査用に整理されている(提示が速い)
環境(廃棄物・油汚れ)監査チェックリスト
- 廃棄物の分別と保管ルールが明確(表示あり)
- 油漏れ・油汚れの放置がない(床のテカリ含む)
- 切粉・粉塵の堆積がない(清掃頻度が決まっている)
- 洗浄剤・化学物質の保管が適切(容器表示・漏れなし)
- 排水・床下ピット周りが整理されている
監査前7日間の是正スケジュール(7日前〜前日)
「時間がない」「通常稼働で手が回らない」場合でも、最低限これだけは押さえるべき現実的なスケジュールです。
7日前:全体設計(段取り)
- 監査範囲(ライン・倉庫・検査室・外注管理)を確定
- 監査官の導線(入口→現場→記録提示)を想定
- 指摘の芽を洗い出し(TOP10を元に現場巡回)
6日前:5S集中(見た目ではなく“管理”)
- 仮置き品をゼロに(難しければ仮置場をルール化)
- 区画線・表示を整備
- 工具・治具の定位置化(写真で標準化)
5日前:安全(通路・避難経路の徹底)
- 通路幅確保、避難経路の障害物撤去
- 消火器・分電盤周りのスペース確保
- 危険箇所の注意表示
4日前:品質(トレサビと不適合品)
- 不適合品の隔離・識別を再整備
- ロット追跡テスト(製品→材料→工程へ戻れるか)
- 作業標準書と実作業の差を潰す
3日前:記録(エビデンスの最終整備)
- 点検表の抜け確認
- 校正証明・教育記録の整理(すぐ出せる状態に)
- CAPA(是正処置)の未完を潰す
2日前:模擬監査(内部監査)
- 部署横断で相互チェック(第三者目線)
- 想定質問集を用意し、回答の統一
- 現場と書類の整合性を確認
前日:見せ方の仕上げ
- 導線上の“見える場所”を最終清掃
- 記録ファイルを一冊に集約(索引付き)
- 写真で「改善の証拠」を用意(Before/After)
是正処置報告書(CAPA)の書き方
監査で強いのは「綺麗になりました」ではなく、再発防止の仕組みが説明できることです。
最低限必要な項目
- 指摘事項(何が問題か:事実ベース)
- 影響範囲(どこまで影響するか:製品/工程/他ライン)
- 暫定処置(Containment:今すぐ止血)
- 真因(Root Cause:なぜ起きたか)
- 恒久対策(Corrective Action:再発防止の仕組み)
- 効果確認(Verification:いつ、どう確認するか)
- 添付エビデンス(写真、記録、改訂標準書)
例文(短いサンプル)
指摘事項:
通路に資材が仮置きされ、避難経路が一部塞がっていた。
暫定処置:
当日中に仮置き資材を移動し、通路を確保。作業者へ注意喚起を実施。
真因:
仮置き場所が定義されておらず、置場不足時のルールが無かったため。
恒久対策:
仮置場を新設し、区画線と表示を設定。仮置き期限を「最大24時間」とし、日次巡回チェック表を導入。置場不足が発生した場合の責任者(班長)判断フローを標準書に追記。
効果確認:
1週間日次でチェック表確認。監査前日に内部監査で通路状態を再確認。
添付:
区画線写真、表示写真、チェック表(1週間分)
なぜなぜ分析を簡単に回すコツ
- “人が悪い”で止めない(例:注意不足 → ルール・仕組みに落とす)
- 現場で再現できる言葉にする(抽象語NG:「意識が低い」×)
- 対策は“記録に残る形”にする(チェック表/表示/標準書改訂)
「不要設備・遊休機械」が監査で危険な理由
不要設備・遊休機械は、監査で意外に槍玉に上がります。
なぜ槍玉に上がるか
監査官から見ると遊休設備は、
- 管理外(点検してない/責任者不明)
- 安全リスク(転倒、油漏れ、通路侵食)
- 品質リスク(異物、錆、汚れ、混入)
の象徴に見えるからです。
間に合わない時の現実策(保管ルール化・表示・清掃・写真)
- 遊休設備エリアを区画化(区画線+立入制限)
- 表示:「遊休設備」「使用停止」「管理責任者」「最終点検日」
- 清掃:油汚れ・切粉・床面を最低限除去
- 写真エビデンス:管理状態(封印、表示)を残す
- 点検記録(簡易で可):月1でも“ゼロより強い”
まとめ:監査は「仕組みの証明」
取引先監査を通すために大事なのは、現場を良くするだけでなく、管理できていることを証明することです。
- 監査官は品質より管理状態を見る
- 5Sは「綺麗」ではなく「ルールと表示と定位置」
- 通路・避難経路は最優先
- 不適合品は隔離+表示+記録
- 記録(エビデンス)は“出せる状態”まで整理
- CAPAは「止血→真因→仕組み化→確認」で書く
- 遊休機械は危険。撤去できなければ管理ルール化
監査前の片付け・撤去でお困りの場合
監査直前は「やることが多い」のに現場は通常稼働で、人も時間も足りない…というのが現実です。
もし監査直前で、片付け・撤去・搬出(短納期対応)がボトルネックになっている場合は、外部支援を使うのも一つの手です。
- 監査前の片付け・撤去・搬出など、短納期で現場対応できます。
- また、売れる設備は相殺(買取)も可能なため、コスト負担を抑えた形で進められるケースもあります。
無理に全部を内製で抱えず、「監査に通すための最短ルート」を選ぶことが、結果的に工場の信用を守ることにつながります。
遊休設備の買取ならご相談下さい。
監査直前に意外と時間を取られるのが、不要設備・遊休機械の整理です。
「撤去が間に合わない」「移動できない」「置場がない」という状態は、5S・安全(通路・避難経路)・異物混入リスクの観点から監査で見られやすく、指摘につながることがあります。
もし社内対応だけで難しい場合は、撤去・搬出・片付けまで含めて外部の現場支援を使うのも現実的な選択肢です。
また、不要設備の中には中古市場で価値が付くものも多く、売却(買取)によって撤去コストを相殺できるケースもあります。
