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センシングツール(IoT)を理解するための整理ガイド

工場の見えない課題を数値で捉える

「センシングツール(IoT)」という言葉を聞く機会は増えましたが、実際に調べ始めると、メーカーや製品が多く、どこから理解すればよいか迷いやすい分野です。さらに、稼働監視・予兆保全・電力管理・工具センシングなど、目的が異なるツールが同じ“センシング”として語られることも多く、比較が難しく感じられます。

この記事は、特定製品の購入を強く促すものではありません。センシングツールを「どう整理して理解し、どう比較検討すればよいか」を中立的にまとめたガイドです。導入を急ぐ必要はありませんが、いざ検討するときに判断の軸を持てるよう、全体像から順に整理していきます。


1. センシングツールとは何か

1-1. センシングの役割

センシングの役割は、工場内で起きている事実を「後から確認できる形」にすることです。人の経験や勘を否定するものではなく、むしろ経験値を活かすための補助線として機能します。

例えば、同じ設備・同じ段取りのはずなのに品質や加工音が違う、停止が増えている気がする、電力のピークが上がっている気がする――こうした“気づき”を、数値やログとして残せるようにするのがセンシングの基本的な価値です。

1-2. 多くの製品に共通する基本構成

センシングツールはメーカーが違っても、概ね次のような構成に分解できます。

  • センサー:設備や工程の状態を数値化する(振動、温度、電流、電力、圧力、流量など)
  • ゲートウェイ(または中継機):複数センサーのデータを集約し、ネットワークへ送る
  • クラウド/アプリ/ダッシュボード:見える形に整え、蓄積し、アラートや分析につなげる

「センサーだけ買えば終わり」ではなく、データの集め方・見せ方・保存の仕方まで含めて仕組みとして捉えると、比較の精度が上がります。

1-3. 製品ごとの差が出やすいポイント

製品を見比べるとき、差が出やすいのは次の3点です。

  • 何を測ることを重視しているか(稼働・停止/振動/電力/加工点など)
  • 誰が使う前提か(現場が日常的に見る/保全担当が見る/管理部門が見る)
  • ITスキルの前提(設定が簡単/カスタム性が高いが設定が必要 など)

この「前提」が噛み合わないと、機能が豊富でも使われなくなりがちです。次章からは、目的別に分類して整理します。


2. センシングツールは目的で分類

センシングツールを比較する際は、まず「自社が把握したいものは何か」を言語化するのが近道です。ここでは代表的な分類を5つに分けて紹介します。現場の課題は複合的なので、最終的に複数分類を組み合わせることも珍しくありません。まずは地図として捉えてください。


3. 【分類①】設備の稼働・停止を把握するタイプ

目的

設備が「いつ・どれくらい」動いているかを把握し、稼働状況や停止の傾向を見える化することが主目的です。最初の一歩として選ばれやすい分類です。

主なメーカー・構成例(例示)

  • オムロン:設備稼働モニタリング構成
  • 三菱電機:稼働状態監視向けIoT構成
  • KEYENCE:PLC連携による稼働データ取得構成
  • NEC:製造業向けIoT基盤

特徴

  • 電流・接点・信号などから稼働/停止を判定する設計が多い
  • データ構造が比較的シンプルで、運用に乗せやすい
  • 「止まっている理由」までは直接分からないため、次の改善設計が重要

稼働・停止の可視化は、現場の感覚と数字が一致しているかを確認するだけでも価値があります。一方で、データが取れた後の「見る習慣」「現場での使い方」を設計しないと、ログが眠りやすい点には注意が必要です。


4. 【分類②】後付けしやすいIoTセンサータイプ

目的

既存設備に大きな改造をせず、比較的短期間でデータ取得を始めることが目的です。古い設備が多い工場や、配線工事を最小限にしたい環境で検討されやすい分類です。

主なメーカー・製品例(例示)

  • IDEC:IoTゲートウェイ+後付けセンサー
  • CONTEC:CONPROSYSシリーズ
  • 日立産機:設備IoTスターターキット
  • MISUMI:IoT対応センサー構成

特徴

  • 無線・クランプ式など、設置負担を抑えた選択肢が多い
  • 「まず試す」導入設計に向く
  • 通信環境(電波・ノイズ・設置場所)の影響を受ける場合がある

後付け型は導入しやすい反面、現場環境に依存する要素(電源の取り回し、電波状況、金属遮蔽、油や切粉など)もあります。導入前に「置けるか」「守れるか」を現場目線でチェックしておくと失敗が減ります。


5. 【分類③】加工点に近い「工具センシング」タイプ

目的

加工そのものの状態変化(工具・刃先・主軸近傍の変化)を捉えることが主目的です。設備が動いているかではなく、「加工がどういう状態か」を把握したい場合の考え方です。

主な製品例(例示)

  • 京セラ:VIMOA(ヴィモア)
  • 住友電気工業:SumiForce

特徴

  • 振動や負荷など、細かな変化データを扱うケースが多い
  • データ粒度が細かく、傾向把握や条件検討に向く
  • 現場・技術者の関与が前提になりやすい(データの読み方・使い方の設計が重要)

工具センシングは、導入すれば自動的に結論が出る類のものではなく、「何を異常とみなすか」「どの変化を管理したいか」を整理して運用に落とすことで価値が出やすい分類です。まずは、関心のある工程・課題(ビビり、工具摩耗、条件出し、品質変動など)を言葉にするところから始めると検討が進みます。


6. 【分類④】状態監視・予兆把握タイプ

目的

設備や回転機器などの状態変化を継続的に捉え、異常の兆候を早めに把握することが目的です。突発停止や保全負荷の課題が強い場合に検討されることが多い分類です。

主なメーカー・製品例(例示)

  • IFM:状態監視センサー
  • SKF:回転機器状態監視システム
  • 横河電機:設備状態監視ソリューション
  • オムロン:振動・状態監視機器

特徴

  • 振動・温度・音などを常時計測し、変化の傾向を見ていく設計が多い
  • データ量が増えやすく、アラート設計やしきい値設計が重要
  • 短期よりも中長期の運用で価値が出やすい

予兆把握は「異常を当てる」ことだけが目的ではありません。点検の優先順位付け、保全計画の根拠づけ、状態の“平常”を定義する、といった運用設計ができると現場で使われやすくなります。


7. 【分類⑤】電力・エネルギー管理タイプ

目的

電力使用状況や負荷の傾向を把握し、工場全体を俯瞰することが目的です。省エネだけでなく、ピーク負荷の把握や、設備の使われ方を別角度から理解する用途でも使われます。

主なメーカー・製品例(例示)

  • 三菱電機:電力監視・管理システム
  • パナソニック:エネルギーマネジメント
  • 東芝:工場向けエネルギー可視化

特徴

  • ライン・設備単位、または工場全体の見える化に向く
  • 管理部門と現場の共通言語になりやすい
  • 生産量や稼働状況とセットで見ないと誤解が生まれる場合がある

電力系は「数値が分かりやすい」反面、現場側の実態(段取り、待機、空運転など)とセットで読み解く必要があります。見せ方(ダッシュボード設計)次第で、現場の納得感が大きく変わります。


8. 価格帯・契約形態の考え方

センシングツールは「センサー代」だけでなく、ゲートウェイやクラウド利用料、設定・保守などを含めて総額で考える必要があります。ここでは一般的な考え方として整理します。

8-1. ざっくりした費用要素

  • センサー:数万円台〜(種類・精度・耐環境で幅が大きい)
  • ゲートウェイ:数万〜数十万円
  • 設定費用:0〜数十万円(自社対応か、支援を受けるかで変動)
  • クラウド利用・保守:月額制が多い(保存期間や機能で変動)

8-2. 主な契約形態

  • 買い切り+保守:初期費用は大きいが、運用コストを読みやすい
  • 月額サブスクリプション:始めやすいが、長期運用の総額を確認したい

費用を比較するときは、センサー点数の増加、データ保存期間、ダッシュボード利用人数、アラート通知、外部連携(API等)などでコスト構造が変わる点に注意してください。


9. 導入前に整理したい3つの視点

製品比較に入る前に、次の3点を整理しておくと判断が速くなります。

9-1. 何を把握したいのか

稼働・停止なのか、状態監視なのか、電力なのか、加工点なのか。最初の焦点が定まると、不要な比較が減ります。

9-2. 誰がデータを見るのか

現場が日々見るのか、保全担当が見るのか、管理部門が見るのかで、必要な画面・粒度・通知の設計が変わります。

9-3. 現場にどこまで負担をかけられるか

設置や運用に現場負担が増えると、継続利用が難しくなることがあります。「データを取る仕組み」だけでなく、「使う習慣」を成立させる設計が重要です。


10. よくある失敗パターン

センシング導入で起きがちな失敗は、機器選定そのものよりも“運用設計”に偏ることが多い印象です。代表例を挙げます。

  • データは取れるが誰も見ていない:ダッシュボードが日常業務に組み込まれていない
  • 目的が曖昧なまま導入:何を改善したいのかが言語化されていない
  • 現場の理解が追いつかない:監視に見えて抵抗が出る、見せ方が納得されない

回避策としては、最小範囲(1台・1ライン)から始め、目的・見る人・見る頻度を決めて“習慣化”まで設計することが効果的です。


11. センシングは「理解」から始まる

センシングツールに万能な正解はありません。大切なのは、まず自社の課題を「目的」で整理し、それに合う分類を選べる状態になることです。稼働・停止から入るのか、状態監視なのか、電力なのか、加工点なのか。入口を間違えなければ、比較検討は一気にやりやすくなります。

導入する/しないの判断も含め、判断の軸を持つことが第一歩です。この記事が、その整理の材料になれば幸いです。


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