DMG森精機 DMU50を売却するまで
設備を売却するという判断は、経営者にとって簡単なものではありません。特に高精度な五軸マシニングセンタのように、導入時に大きな投資判断を伴った機械であればなおさらです。
今回は、富山県内で金型製造を営んできた工場が、DMG森精機のDMU50を手放すに至った経緯をご紹介します。同じような状況にある経営者の方にとって、判断の参考になれば幸いです。
相談内容
地域:富山県
業種:金型製造(精密金型・試作金型を中心とした加工業)
従業員数:10名前後
機械:DMG森精機 DMU50(五軸マシニングセンタ)
相談背景:後継者が不在のまま事業の先行きを考える中で、設備をどう整理すべきか相談を受けたケースです。経営者自身はまだ現役で稼働できる年齢ではあるものの、数年後を見据えた事業縮小の方向性を固めつつある段階でした。
※本記事に登場する事例は、守秘義務の観点から大幅にフィクション化したモデルケースです。
導入当時の期待
この工場がDMU50を導入したのは、複雑形状の金型加工を社内で一貫対応できる体制を整えるためでした。当時は自動車関連の試作金型案件が増えており、外注に出していた多軸加工を自社で抱え込むことで、リードタイムの短縮と利益率の改善を見込んでいました。
五軸マシニングセンタは投資額も大きく、導入には相応の覚悟が必要だったといいます。それでも「これからの金型加工は多軸化が前提になる」という判断のもと、設備投資を決断されました。
実際、導入後数年間は狙い通りの効果が出ていました。外注費が減り、加工精度の向上によって顧客からの評価も高まったといいます。
正直な話、DMU50クラスの五軸機を「まだ動くから」って理由だけで持ち続けてしまう金型屋さん、すごく多いんですよね。個人的には「まだ十分稼働してるうち」に一回査定だけでも取っておくのをオススメしてます。売る売らないは後で決めれば大丈夫です。
買取のご相談は下のリンクからお願いします。富山市、高岡市、滑川市、魚津市、射水市、南砺市、また石川県、福井県など北陸はどちらの地域でも買取させていただきます。
何が変わったのか
設備導入から年数が経つ中で、工場を取り巻く環境は徐々に変化していきました。
市場環境
自動車業界の電動化シフトに伴い、これまで主力だった試作金型の案件数が減少傾向に。新規開発案件そのものが少なくなり、受注の波が読みにくくなっていました。
人材
五軸機を扱える技能者は限られており、経営者自身がプログラミングや段取りの中心を担っていました。後継となる人材が育っておらず、技術の継承が進まないまま時間が経過していたのが実情です。
受注
既存顧客からの継続案件はあるものの、新規開拓の余力がなく、受注全体としては緩やかな減少傾向にありました。
利益率
受注量が落ち着く一方で、設備の保守費用や電気代は変わらず発生し続けるため、利益率は徐々に圧迫されていきました。
設備構成
DMU50は工場の中核を担う設備でしたが、フル稼働とは言えない状況が続き、稼働率の低下が目立つようになっていました。

なぜ売却を検討したのか
後継者が決まっていない状況で、経営者は「いつまで自分がこの設備を動かし続けるのか」という問いに向き合うことになりました。
遊休設備化
受注が減る中で、DMU50の稼働日数は徐々に減少。高性能な設備であるほど、使われていない期間のコストは重く感じられるようになります。
維持費・保守費
五軸機特有の定期メンテナンスや精度調整には専門的な保守契約が必要で、稼働率が下がっても費用は一定額発生し続けます。
電気代
近年の電気代上昇は、待機電力や空調を含めた工場全体の固定費を押し上げる要因となっていました。
固定資産税
機械設備にかかる固定資産税も、稼働状況に関わらず毎年発生するコストです。経営者にとっては「動いていないのに税金だけ払っている」という感覚が強くなっていったといいます。
工場スペース
DMU50は設置面積も大きく、稼働率が下がるにつれて「このスペースを他用途に使えないか」という発想も出てくるようになりました。
このように、後継者不在という根本的な課題に加え、複数のコスト要因が重なったことが、売却検討の直接的な引き金となりました。
売却検討の引き金となったコスト構造
| 要因 | 内容 | 稼働率が下がっても発生するか |
|---|---|---|
| 遊休設備化 | 受注減少に伴いDMU50の稼働日数が減少 | ― |
| 維持費・保守費 | 五軸機特有の定期メンテナンス・精度調整に専門保守契約が必要 | 発生する |
| 電気代 | 待機電力・空調含む固定費の上昇要因 | 発生する |
| 固定資産税 | 機械設備に毎年課税 | 発生する |
| 工場スペース | 設置面積が大きく、他用途転用の余地を圧迫 | ― |
移設という選択肢はあったのか
設備を手放す前に、当然「移設して使い続ける」という選択肢も検討されました。
しかし、五軸マシニングセンタの移設には大きな負担が伴います。
移設費
重量機械の運搬には専用車両や重機が必要で、距離や搬入経路によって費用が大きく変動します。
再据付費
五軸機は精度が命であるため、移設後の据付・精度調整には専門業者による作業が不可欠です。再稼働までの期間も考慮する必要があります。
リスク
移設先で同等の精度を再現できるか、また新たな受注先を確保できるかという不確実性も伴います。後継者がいない状況では、移設後も自分が引き続き運用する前提になってしまい、本質的な課題解決にはならないという結論に至りました。
移設・売却・廃棄のどれが有利か分からない場合でもご相談可能です。
設備更新との比較
経営者は「残す」「売る」「更新する」という3つの選択肢を比較検討しました。
| 比較項目 | 残す場合 | 売る場合 | 更新する場合 |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 発生しない | 発生しない(売却収入あり) | 新規投資が必要 |
| 維持費・保守費 | 継続発生 | 発生しなくなる | 新たに発生 |
| 技術継承の必要性 | 高い(後継者前提) | 不要になる | 高い(後継者前提) |
| 受注対応力 | 現状維持 | 加工は外注対応へ移行 | 向上の可能性あり |
| スペース活用 | 変化なし | 空きスペース確保 | 変化なし |
| 経営判断の方向性 | 先送り | 事業縮小と整合 | 事業継続が前提 |
この比較を通じて、後継者がいない以上「更新」は前提が崩れていること、「残す」はコストの先送りに過ぎないことが明確になりました。最終的に「売る」という選択が、事業の今後の方向性と最も整合する判断として残りました。
売却後の変化
DMU50の売却後、工場にはいくつかの変化が生まれました。
資金
売却によって得た資金は、既存設備の保守費用や当面の運転資金に充当されました。大きな投資ではなく、安定運営を優先する方向です。
スペース
設備が撤去されたことで、工場内のレイアウトに余裕が生まれ、資材置き場や検査スペースとして活用できるようになりました。
生産体制
五軸加工が必要な案件については、信頼できる外注先と連携する体制に切り替えました。社内設備を絞り込むことで、固定費を抑えた運営が可能になっています。
組織
後継者がいない中で、無理に技術継承を続けるのではなく、現有メンバーで対応可能な範囲に事業規模を調整する方向性が明確になりました。経営者自身にとっても、将来への不安が一定程度解消されたといいます。

同じ悩みを持つ工場が確認したいポイント
後継者不在や事業縮小を検討している経営者が、設備整理にあたって確認しておきたい点を整理します。
- 現有設備の稼働率は、受注実績に対して適正か
- 維持費・保守費・電気代・固定資産税など、稼働率に関わらず発生するコストはどの程度か
- 移設する場合、移設費と再据付費を含めた総コストはどの程度になるか
- 後継者の有無によって、設備投資・更新の前提条件が変わっていないか
- 設備を売却した場合、加工対応力はどのように維持できるか(外注先の確保など)
- 売却によって得られる資金や空きスペースを、今後どのように活用できるか
これらは一度に答えが出るものではなく、複数の視点から時間をかけて整理していくべき項目です。
まとめ
今回ご紹介したケースは、後継者不在という構造的な課題に、受注減少やコスト上昇といった環境変化が重なったことで、設備の在り方を見直すことになった事例です。
DMU50という高性能な五軸マシニングセンタであっても、それを活かす体制(後継者・受注・技術継承)が整わなければ、維持すること自体が経営上の負担になってしまいます。
設備投資の成否は、機械の性能だけで決まるものではなく、「その設備を将来も使い続けられる体制があるかどうか」という経営判断にかかっています。今回のケースでは、移設・更新・維持という選択肢をひとつずつ検討した上で、事業の方向性と整合する「売却」という判断に至りました。
こういう後継者不在系のご相談、正直めちゃくちゃ多いです。今回みたいに数字で比較したケースって、後から後悔する確率めちゃくちゃ低いんですよ。利益が出てる決算期には節税につながるケースもあるので、そのへんも含めて一回相談してもらえると、結構違う提案ができたりします。
買取のご相談は下のリンクからお願いします。富山市、高岡市、滑川市、魚津市、射水市、南砺市、また石川県、福井県など北陸はどちらの地域でも買取させていただきます。
アスメディア 河野(設備活用コンサルタント)
2011年よりリユース業界に関わり、現在は五軸マシニングセンタをはじめとする工作機械の買取査定・売却相談に携わる。機械そのものの技術的知見よりも、「いつ売るべきか」「どのタイミングで売却損を出せば節税につながるか」「損切りをして次の設備投資に進んだ方が良いのか」といった、財務・税務・経営判断の面でのアドバイスを強みとしています。今回のケースのように、後継者不在や稼働率低下が絡む場合は特に、売却のタイミング一つで手元に残る金額が大きく変わってくるため、決算のタイミングも含めたご提案を心がけています。NHK朝のニュースや、日経新聞朝刊でも紹介されたことがあります。独立前は江東区のIT会社でソフトウェアの営業や、六本木ヒルズでヤフーストア向けの営業をしていました。
お問い合わせ
機械の買取査定・ご相談はこちらからお気軽にお問い合わせください。




