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【長野県】オークマ門型マシニング(MCR-A5C)の売却で脱下請けを決断 [買取事例]

自社製品開発へ舵を切った精密加工工場

「うちはずっと受託でやってきた。でも、このままでいいのか、という気持ちが消えないんです」

ある展示会の帰り道、そう話してくださった工場経営者の言葉が印象に残っています。

長野県の精密加工業界には、高い技術力を持ちながらも、長年の受託構造の中で収益が少しずつ削られてきた工場が少なくありません。

設備への投資が続く一方で、利益率の改善が見えない——そのジレンマに向き合いながらも、「変わりたい」という気持ちを抱えている経営者の方は、思っているより多いように感じています。

今回ご紹介するのは、長野県内で精密部品の受託加工を手がけてきた工場が、自社製品開発への転換を決意し、門型マシニングセンタの売却という決断に至るまでのモデルケースです。

※本記事は守秘義務保護のため、複数の事例を組み合わせ大幅にフィクション化したモデルケースです。実在の企業・人物とは関係ありません。

相談内容

ご相談をいただいたのは、長野県内で精密部品の受託加工を主力事業とする中堅の工場でした。

FA機器や産業機械の部品を長年にわたって手がけており、加工精度の高さと納期対応力を武器に、複数の大手メーカーと継続的な取引を維持してきた会社です。

主力設備は、数年前に導入したオークマの門型マシニングセンタ(MCR-A5C)。

複雑形状の大型部品にも対応できるこの設備が、受託加工の柱として工場を支えてきました。

しかしここ数年、受託加工の粗利率が少しずつ落ち込んでいます。

原材料の高騰、顧客からの値引き要求、そして電気代の上昇が同時進行し、工場の収益構造は年々厳しさを増していきました。

項目内容
業種FA機器・産業機械向け精密部品の受託加工業
所在地長野県内
主力設備門型マシニングセンタ(オークマ MCR-A5C)
経営課題受託加工の粗利率低下・下請け体質からの脱却
目指す方向自社製品ラインの立ち上げと受託依存度の段階的引き下げ
売却の対象受託専用に稼働してきた門型マシニングセンタ

「売る前に、まず話してほしい」と思う理由

これまで多くの工場経営者様のご相談に立ち合ってきましたが、「自社製品を作りたい」「下請けから抜け出したい」という思いを持ちながら、設備の整理を後回しにしているうちに、肝心の転換タイミングを逃してしまったケースを何度も見てきました。

設備を売るかどうか以前に、「今の設備が次の事業にどう影響するか」を整理することが、事業転換の第一歩になります。

決断が固まる前のご相談こそ、いちばん選択肢が広い状態です。

設備更新や売却をまだ決めていない段階でもご相談いただけます。


オークマの門型マシニングセンタ(MCR-A5C)を導入した理由

受託加工の「主力機」として期待を担った設備

この工場が門型マシニングセンタを導入したのは、ちょうど大口の受託契約が増えていた時期のことでした。

FA機器メーカーや産業機械メーカーから、大型かつ高精度な部品の加工依頼が増え、既存設備では対応しきれない案件が出てきたのです。

「次のステージに上がるための設備投資」として、経営者は門型マシニングセンタの導入を決断したといいます。

導入後は想定通りに大型部品の加工案件を受注できるようになり、売上規模の拡大につながりました。

技術者の間では、この設備を使いこなすことがひとつのステータスでもありました。

職人技術と最新設備が共存する工場づくり

この工場には、数十年にわたって精密加工の技術を磨いてきたベテランの技術者が複数在籍していました。

その職人技術と、門型マシニングをはじめとする最新設備を組み合わせることが、他社との差別化につながると経営者は信じていたのです。

しかし時間とともに、その「強み」の組み合わせ方そのものを見直さなければならない局面が訪れます。


受託加工一本で続けてきた10年間に起きていたこと

利益率がじわじわと削られ続けた構造的な問題

受託加工の事業が安定している間は、課題が見えにくいものです。

ところが、年単位で粗利率の推移を数字で並べてみると、少しずつ収益が薄くなっていることがはっきりと分かりました。

下のグラフは、この工場における受託加工部門の粗利率の推移をイメージ化したものです(数値は創作の参考値です)。

5年間で粗利率は26%から14%台へと落ち込んでいます。

目標ラインとして設定していた25%には、2年目以降一度も届かない状態が続いていました。

その背景には、顧客企業からのコストダウン要求が年々強まっていたことがあります。

「品質で選ばれているはずなのに、最後は価格の話になってしまう」という閉塞感を、経営者の方は何年もの間抱えていたといいます。

採用難が追い打ちをかけた

もう一つの問題は、技術者の採用が年々難しくなっていたことです。

門型マシニングセンタを扱えるレベルの技術者は、地域の求人市場ではほとんど見つかりません。

ベテラン社員への依存度が高まる一方で、次世代に技術を継承する見通しが立たないまま時間だけが過ぎていきました。

設備を維持するためのコストと、人材育成に必要な時間とエネルギーが、経営資源を少しずつ圧迫していったのです。


「自社製品を作りたい」という夢が現実の壁にぶつかった瞬間

展示会がきっかけで生まれた「気づき」

転機は、ある機械・工具の展示会への参加がきっかけでした。

会場を歩いていた経営者は、同業と思われる工場が自社開発の搬送装置やFA用の治具を出品しているブースを目にしました。

「うちでも、あれくらいのものは技術的に作れる。なぜ今まで考えなかったのか」

その帰り道の高速道路で、経営者は強くそう感じたといいます。

長年の受託加工で培った精密加工の技術力は、実は自社製品開発に十分活かせるはずでした。

設備が「前に進む」邪魔をしていた

しかし、いざ自社製品開発の検討を始めてみると、すぐに壁にぶつかりました。

門型マシニングセンタが受託案件でほぼ毎日フル稼働しており、試作品の加工に使う余裕がないのです。

試作には時間がかかります。

受託案件の合間を縫って試作を進めようとしても、顧客の納期が最優先となるため、自社製品の開発は後回しになり続けました。

「やりたいことがあるのに、設備が邪魔をしている」という状況に、経営者の方は強いもどかしさを感じたといいます。


門型マシニングをどう扱うか

この工場が検討した選択肢は、大きく4つに整理されました。

選択肢自社製品開発への影響コスト面リスク
受託加工を継続し現状維持試作・開発の時間が生まれない固定費が継続粗利率低下が続く
受託と自社製品開発を並行設備・資金・人材が分散し非効率投資が二重になる両方が中途半端になる恐れ
門型を売却し開発専用設備へ更新試作に特化した設備を確保できる売却資金が新投資の原資になる受託案件の一部を断る必要がある
受託を外注化して開発に集中外注先の管理コストと品質リスク外注費が発生取引先との関係変化が必要

中小企業診断士との相談の中で、「二兎を追う者は一兎をも得ず」という言葉を引用されたといいます。

経営資源が限られている中で受託と自社製品開発を同時に追うことは、どちらも中途半端な結果につながりやすいという指摘でした。


受託加工から自社製品開発への転換に伴う設備整理のご相談もお受けしています。


売却という決断が「前に進む」ための最初の一手になった理由

税理士の助言が背中を押した

オークマ 門型マシニング MCR-A5Cの売却を具体的に検討するようになったのは、顧問税理士との打ち合わせがきっかけでした。

「今年は受託加工の売上がそれなりに確保できている。設備の売却損を計上するなら、利益が出ているうちの方が税務上有利です」

この一言が、経営者の方にとって大きな後押しとなりました。

売却を「損をすること」としてではなく、「税負担を抑えながら次の投資に移る手段」として捉え直せたのです。

受託案件の段階的な移行プランを立てた

売却を決めた後、すぐに着手したのは、受託案件の縮小プランの策定でした。

取引先すべてとの契約を一気に見直すのではなく、優先度の低い案件から順次、外注や他社への紹介という形で整理を進めていく方針をとりました。

この「段階的な移行」という考え方が、取引先との関係を壊さずに事業転換を進める上で重要な役割を果たしたといいます。


設備売却から一年、工場の景色はどう変わったか

試作ができる工場に生まれ変わった

オークマ 門型マシニングセンタ MCR-A5Cを売却した後、工場には試作専用の加工スペースが生まれました。

小回りの利く中型設備を導入したことで、若手技術者でも試作品の加工に関われるようになったといいます。

「以前は設備が使えなくて試作が止まっていたのに、今は若い子が積極的にアイデアを出してくれるようになった」と、経営者の方は話してくれました。

自社ブランドの第一号製品が完成した

売却から約1年後、FA用の位置決め治具を自社ブランドで初めて展示会に出品したといいます。

受注には至らなかったものの、複数の来場者から問い合わせを受けたことで、「市場に需要がある」という手応えを初めて感じることができたそうです。

受託加工への依存度はまだ高い状態ですが、その比率を少しずつ下げていく道筋が見えてきたことで、経営者の方の表情は明らかに変わったといいます。


受託加工から自社製品開発へ踏み出す前に確認したいこと

事業と設備の方向性が合っているか

同じような状況を抱えている工場経営者の方に向けて、事前に確認しておきたい項目を整理しました。

  • 受託加工の粗利率は、過去3〜5年でどのように推移しているか
  • 主要顧客からの値引き要求が慢性化していないか
  • 大型設備が受託専用になっており、自社の試作・開発に使えない状態になっていないか
  • 自社製品のアイデアや構想はあるが、設備・資金・時間のどれかが障壁になっていないか
  • 受託と自社製品開発の両立を検討したことがあり、その結果どちらも進まなかった経験はないか
  • 設備を売却した場合の資金をどの事業に充てるか、おおまかな構想があるか
  • 売却損の計上タイミングについて、税理士に相談したことがあるか
  • 設備売却後に受託案件をどう整理するか、移行のシナリオを描けているか

一つでも「そういえば考えてこなかった」という項目があれば、早い段階で専門家への相談をお勧めします。

整理できていない点が多いほど、売却のタイミングを逃したり、不利な条件での取引につながりやすくなります。


まとめ:設備を手放すことは、次のステージへの「投資」だった

今回のケースは、コスト削減や事業縮小からではなく、「もっと自分たちの技術を活かしたい」という前向きな動機から始まった事業転換の事例でした。

受託加工から自社製品開発への転換は、一度に完結するものではありません。

設備の売却は、そのプロセスにおける最初の一歩に過ぎません。

しかし、その一歩を踏み出せたことで、工場の雰囲気も、技術者のモチベーションも、確かに変わっていきました。

ご自身の工場で、「変わりたい」という思いを持ちながらも最初の一歩を踏み出せずにいるとしたら、その理由の一つは設備の扱いにあるかもしれません。

長年この業界で多くの売却相談に関わってきた立場から申し上げると、設備の売却はゴールではなく、次の経営判断に向けた資金と空間を生み出す「手段」です。

早すぎる売却で損をすることも、タイミングを逃して市場価値が下がってから動くことも、どちらも実際に見てきました。

だからこそ、「売るかどうか迷っている段階」からのご相談をお勧めしています。

設備投資の失敗や遊休設備の悩みは、多くの工場が抱えています。

まだ売却を決めていなくても構いません。

設備更新・事業承継・廃業・工場移転に伴う設備整理についてはお気軽にご相談ください。


意思決定プロセスのイメージ図

受託加工から自社製品開発へ転換する過程で、設備の扱いをどのように判断していったかをフローチャートにまとめました。


編集長プロフィール

アスメディア 河野(設備活用コンサルタント)

2011年よりリユース業界に関わり、工作機械の買取査定・売却相談に長年携わっています。「いつ売るべきか」「どう売れば手取りを最大化できるか」という経営判断のサポートを得意とし、設備売却損の計上タイミングや次の投資原資としての活用方法など、財務・税務面の視点からのアドバイスも行っています。NHK朝のニュースや日経新聞朝刊でも紹介された実績があります。趣味はNBAとBリーグの観戦、バスケのYouTubeチャンネル運営。バーベキューで昼飲みするのが何より好きです。

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