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DMU50を導入した精密加工会社が設備見直しを決断した話 [買取事例]

中国向けEV案件が消えた

「DMG森精機 DMU50を導入したものの、思ったほど使えていない」

「EV関連の仕事を見込んで投資したが、予定していた案件が消えた」

「まだ新しい設備だから、売却するにも踏ん切りがつかない」

そんな状況はありませんか?

5軸加工機は、導入すれば自動的に利益を生む設備ではありません。

受注する仕事、加工できる人材、段取りの仕組み、稼働率、利益率。

それらが噛み合って初めて、投資回収の道筋が見えてきます。

今回取り上げるのは、静岡県の精密加工会社B社が、中国EVメーカー向け案件を見込んでDMU50を導入したものの、翌年に案件が消滅し、設備の扱いを見直すことになった事例です。

【注記】

本記事の事例は、お客様の守秘義務保護のため、複数事例をもとに構成・脚色しています。実際の企業名・人物名・設備構成とは異なりますが、製造業で実際に起こり得る意思決定プロセスを再現しています。


なぜB社はDMG森精機 DMU50を導入し失敗したのか?

B社は、静岡県西部にある従業員28名の精密加工会社です。

主な仕事は、自動車部品メーカー向けの試作部品、産業機械向けのアルミ加工部品、治具部品の製作でした。

もともとは3軸マシニングセンタを中心に、旋盤加工と組み合わせて小ロット品をこなす会社です。

大きく成長する会社ではありませんでしたが、短納期対応と現場の融通力で、地元の取引先から一定の信頼を得ていました。

転機になったのは、商社経由で持ち込まれた中国EVメーカー向けのモーターハウジング案件でした。

商社からは、

「中国向けEV部品は今後も伸びる」

「3年間は安定して流れる見込み」

「立ち上げ時に対応できれば、後続案件も狙える」

という説明がありました。

B社の社長にとって、これは大きな機会でした。

既存の仕事は単価が上がりにくく、材料費や電気代、人件費の上昇を価格転嫁しきれていませんでした。

若手社員にも、単純な3軸加工だけではなく、より付加価値の高い加工を覚えさせたいという思いがありました。

そこで候補に上がったのがDMU50でした。

複雑形状の試作や多面加工に対応できること。

段取り替えを減らせること。

将来的にはEV関連だけでなく、航空機、医療、半導体装置部品にも展開できること。

社長はそう考え、約4,800万円の設備投資を決断しました。

機械本体だけでなく、CAM、工具、測定具、基礎工事、電源工事、教育費まで含めると、投資総額は5,500万円近くになりました。

銀行には、EV案件の見込み資料と3年間の売上計画を提出しました。

月間稼働時間は160時間。

そのうち120時間を中国EV案件で埋め、残りを既存顧客の試作加工に回す計画でした。

減価償却と返済を考えても、粗利率が想定通りなら十分に回収できる。

社長はそう判断しました。


DMG森精機 DMU50への期待と現実のギャップ

導入直後、B社の現場は前向きでした。

若手2名がCAM研修を受け、ベテラン工場長も治具設計に加わりました。

モーターハウジングは、複数面の加工精度が求められる部品でした。

従来の3軸機では、段取り替えが多く、位置決めの手間もかかります。

DMU50であれば、工程集約により段取り時間を減らせる見込みがありました。

試作段階では、たしかに効果が出ました。

従来なら3回に分けていた加工を、1回または2回の段取りで済ませられるようになりました。

加工時間そのものよりも、段取りと芯出しの時間が減ったことが大きな成果でした。

現場からも、

「これなら量産立ち上げに間に合う」

「若手にも任せられる工程が増える」

という声が出ていました。

ところが翌年、状況が急変します。

中国EVメーカーが、モーターハウジングの調達を現地メーカーへ切り替える方針を出したのです。

商社からは、

「今回の案件は一旦止まる」

「再開時期は未定」

「別案件で調整する」

という説明がありました。

しかし、実際には代替案件は来ませんでした。

B社が見込んでいた月120時間分の仕事は、ほぼゼロになりました。

DMU50の稼働率は、導入初年度の後半には月40時間前後まで落ちました。

既存の試作加工を一部載せ替えようとしましたが、すべての仕事が5軸加工に向いているわけではありません。

単純なプレート加工やブラケット加工では、既存の3軸機を使ったほうが早く、安く済みます。

DMU50を動かすために無理に仕事を載せ替えると、かえって段取りやCAM作成に時間がかかるケースもありました。

社長が期待した「高付加価値設備」は、いつの間にか「使いどころを探す設備」になっていきました。


売却判断を難しくした理由

DMU50の扱いを見直す話は、すぐには進みませんでした。

理由は単純ではありません。

投資額が大きく、感情的に手放しにくかった

社長にとって、DMU50は単なる機械ではありませんでした。

EV分野へ踏み出す象徴でした。

若手育成への投資でもあり、会社の将来を変えるための挑戦でもありました。

そのため、案件が消えたからといって、すぐに売却する判断はできませんでした。

「もう少し待てば、別のEV案件が来るかもしれない」

「5軸機を持っていることが営業上の強みになるかもしれない」

「ここで手放したら、投資判断の失敗を認めることになる」

そうした思いがありました。

稼働率の低下が数字に表れ始めた

一方で、数字は厳しくなっていました。

導入時に見込んだ月160時間稼働に対し、実績は月30〜50時間。

月によっては、ほとんど動かないこともありました。

DMU50を置いているスペースには、本来なら別の3軸機や検査スペースを置ける可能性がありました。

しかし実際には、空いたテーブル周辺に治具や未使用工具が置かれ、次第に治具置き場のような状態になっていきました。

工場長は社長に言いました。

「このままだと、設備というより固定資産を保管しているだけになります」

この一言が、社長には重く響きました。

減価償却と銀行対応の問題

DMU50はまだ帳簿上の残価が大きく残っていました。

減価償却は進んでいるものの、売却価格によっては帳簿上の損失が出る可能性もありました。

銀行借入も残っています。

社長は銀行に対して、EV案件を前提にした投資計画を説明していました。

そのため、設備を早期に売却することに抵抗がありました。

「銀行から、計画が甘かったと思われるのではないか」

「次の融資に影響しないか」

そう考えたのです。

しかし、顧問税理士からは別の見方を示されました。

「使っていない設備を抱え続けることも、銀行から見れば問題です」

「稼働率、採算、今後の受注見込みを整理して説明できれば、売却は後ろ向きな判断とは限りません」

ここで社長は、売却を失敗処理ではなく、資産の組み替えとして考えるようになりました。

保守費とNC故障リスク

DMU50は高性能な設備です。

しかし、高性能であるほど、保守費や修理費も軽くはありません。

稼働していなくても、定期点検や精度維持のための管理は必要です。

バッテリー、油脂類、クーラント、スピンドル周辺、NC装置。

長期間あまり動かさない状態が続けば、再稼働時に不具合が出る可能性もあります。

工場長は、過去に別の設備でNCトラブルを経験していました。

そのときは部品調達に時間がかかり、修理費も想定以上に膨らみました。

「使わないまま古くなってから売るより、状態が良いうちに価値を確認したほうがいい」

現場からは、そんな意見も出始めました。

人材不足とCAM担当者の負担

B社では、CAMを扱える社員が限られていました。

研修を受けた若手2名のうち、1名は別部門の量産立ち上げに回り、もう1名も通常業務と兼任でした。

DMU50向けの仕事を取るには、営業だけでなく加工検討、見積、CAM、治具、検査まで対応できる体制が必要です。

しかしB社の規模では、専任チームを置く余裕はありませんでした。

新規案件を取るために見積をしても、CAM検討に時間がかかります。

受注できなければ、その検討時間は原価として回収できません。

社長はここでも悩みました。

「設備はある。しかし、それを使い切る人と仕事の流れが足りない」

この現実が、徐々に明らかになっていきました。


DMG森精機 DMU50の価値を把握することから始める

設備を売るかどうかは、すぐに決める必要はありません。

ただし、現在の資産価値を知らないまま判断を先送りすると、選択肢は狭くなります。

稼働率、保守状況、年式、市場での需要、付属品、搬出条件によって、評価は変わります。

DMU50のような設備を今後も使うのか、更新するのか、売却して別設備に振り向けるのか。

判断材料を整理したい場合は、現状確認から始めてみてください。

お問い合わせはこちらです。

なぜB社は今、見直しを決断したのか

B社が最終的に動いた理由は、「案件が消えたから」だけではありません。

案件消失から半年ほどは、社長も工場長も様子を見ていました。

商社から別案件の話が出る可能性もありました。

既存顧客に5軸加工を提案すれば、新しい仕事につながるかもしれないという期待もありました。

しかし、1年が経過しても状況は大きく変わりませんでした。

EV関連の仕事は、国内での試作はあっても、量産に近づくほど海外現地調達へ流れる傾向が強くなりました。

B社が得意とする短納期試作とは相性があっても、DMU50の稼働を安定させるだけの仕事量にはなりませんでした。

その間にも、電気代は上がり、既存設備の更新時期も近づいていました。

古い3軸マシニングの1台は、主軸の異音が出始めていました。

修理するか、入れ替えるか。

現場では、そちらのほうが切実な問題になっていました。

工場長は社長に、次のように提案しました。

「DMU50を残すなら、5軸加工を本気で営業する体制が必要です」

「残さないなら、価値があるうちに現金化して、既存仕事に直結する設備へ回したほうがいいです」

この提案を受けて、社長は社内会議を開きました。

参加したのは、社長、工場長、経理担当、営業担当、CAM担当の若手社員です。

会議では、感情論ではなく数字を並べました。

DMU50の月間稼働時間。

見積案件数。

受注率。

実際の粗利。

保守費。

残債。

工場スペース。

今後2年間で見込める案件。

その結果、B社は「DMU50を残す理由」よりも、「残すために必要な条件」が満たせていないことを確認しました。

もちろん、すぐに処分するのではありません。

まずは中古市場での評価を確認し、売却した場合の資金繰り、銀行への説明、既存設備更新との関係を整理することにしました。

最終的にB社は、DMU50を売却し、老朽化した3軸マシニングの更新資金と検査工程の改善費用に充てる判断をしました。

社長は、会議の最後にこう話しました。

「DMU50を買ったことが失敗だったとは思っていない。ただ、今の会社に合う形へ戻す判断が必要だった」

この言葉に、B社の意思決定が表れています。


この事例から学べること

B社の事例で見るべき点は、「EV案件は危ない」という単純な話ではありません。

市場の成長性があっても、自社の受注ルート、顧客の調達方針、加工体制、人材、資金繰りが噛み合わなければ、設備投資は重荷になります。

特にEV関連では、試作段階では国内加工会社に仕事が来ても、量産段階で海外や現地調達へ移ることがあります。

商社や取引先から「安定する」と言われても、それが契約で保証されているとは限りません。

B社も、商社の説明を信じて投資しました。

しかし、商社が悪かったというより、調達方針の変更に対してB社がコントロールできる範囲が小さかったのです。

ここに設備投資の難しさがあります。

また、5軸加工機は営業上の看板になります。

しかし、看板だけで仕事は埋まりません。

見積対応、加工提案、CAM、治具設計、検査体制まで整っていなければ、稼働率は上がりません。

B社では、若手社員のCAM研修まで行いました。

それでも、人員に余裕がない中小製造業では、通常業務と新規案件開拓を同時に進めるのは簡単ではありません。

もう一つ大きいのは、設備を残す判断にもコストがあるという点です。

売らなければ損は確定しない。

そう考える経営者は少なくありません。

しかし実際には、使っていない設備にもコストはかかります。

工場スペース。

保守費。

電気設備。

管理の手間。

資産としての目減り。

再稼働時の故障リスク。

そして何より、経営判断が止まることの損失です。

B社では、DMU50が治具置き場になりつつありました。

この状態は、現場にとっても良くありません。

「使っていないけれど、触りにくい設備」

「社長が期待して買ったから、誰も整理を言い出せない設備」

こうした空気は、工場の改善を止めます。

B社が見直しに踏み切れたのは、売却ありきで考えたからではありません。

稼働率、利益率、保守費、銀行対応、人材、工場スペースを並べて、会社にとってどの選択が現実的かを確認したからです。


まとめ

DMG森精機 DMU50のような設備は、会社にとって大きな挑戦です。

導入時には、将来の受注、技術力向上、人材育成、新市場への参入といった期待があります。

その期待自体は間違いではありません。

B社も、中国向けEV案件を見込んで投資した時点では、十分に合理的な判断をしていました。

しかし、設備投資は導入後の環境変化まで含めて見直す必要があります。

案件が消えることもあります。

顧客が海外調達へ切り替えることもあります。

人材が足りなくなることもあります。

想定していた稼働率に届かないこともあります。

そのときに大切なのは、売却するかどうかを急いで決めることではありません。

判断を放置しないことです。

使うなら、使うための営業、人材、工程設計を整える。

残すなら、残す理由を数字で説明できるようにする。

手放すなら、価値が残っているうちに選択肢を整理する。

B社にとってDMU50の売却は、失敗の後始末ではありませんでした。

次の設備投資と工場運営に向けて、資産の置き方を見直す判断でした。

現在あまり使っていない設備がある場合、最初に行うべきことは売却ではありません。

稼働状況、保守状態、資産価値、今後の受注見込みを整理することです。

そのうえで、残す、更新する、売却するという選択肢を比較できます。

DMU50を含む遊休設備や稼働率が下がった設備について、現状把握や資産価値の確認を進めたい場合は、こちらからご相談ください。


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