5Sが続かない/不要物が減らない現場あるある
「5Sをやっているのに、現場が全然変わらない」
「赤札を貼ったのに、気づけば元の場所に戻っている」
「不要物を捨てたいが、誰の物か分からず揉めるから放置」——工場ではよくある話です。
5Sが形骸化する工場には、共通して“運用の穴”があります。この記事では、赤札作戦を単なるイベントで終わらせず、整理・整頓を“仕組み”として定着させる手順を、今週から回せる形で解説します。コピペで使える「5S点検表テンプレ」も付けています。
なぜ5Sは続かないのか(原因は3つ)
原因①:捨てる権限が曖昧
不要物が減らない最大の理由は、**「捨てていい人がいない」**ことです。
現場は分かっていても「勝手に廃却できない」「誰かの私物かもしれない」「監査で突っ込まれたら困る」という心理で判断が止まり、保留が積み上がります。
- 所有者が不明
- 用途が不明(“いつか使う”)
- 費用化・廃却処理の手続きが面倒
- 総務/管理/保全との境界が曖昧
原因②:置場がない(仮置きが常態化)
不要物をどかしたくても置場がないと、結局「仮置き」になります。
仮置きが常態化すると、定位置が守れず、整頓も崩れ、清掃もしづらくなります。
- 通路に仮置き → 安全リスク
- ライン脇に積む → 探す・戻すムダ
- 倉庫に押し込む → 棚卸し不能
原因③:ルールがない/例外だらけ
点検表は回しているのに改善しない工場では、ルールがありません。
正確には、**“例外だらけで、現場がルールとして信じていない”**状態です。
- 赤札を貼る基準が曖昧
- 保留期限が決まっていない
- 判定会議が開かれない
- 「治具だから」「金型だから」「予備品だから」で無限延長
赤札作戦とは何か:5Sの「整理」を進める最短手段
目的
赤札作戦は、5Sのうち整理(不要物の排除)を短期間で進める手法です。
現場の“迷い”を見える化し、判断を先送りしない仕組みを作ります。
効果(見える化/判断の先送りを防ぐ)
赤札の最大効果は、不要物を捨てることではなく、**「判断を止めている物を見える化する」**ことです。
- 所有者・用途が不明な物を「見える化」
- 期限を決め、保留を管理できる
- 整理の対象が明確になり、現場改善が進む
- 定位置(置場)を確保でき、整頓が回り出す
赤札作戦の手順(この通りやれば回る)
① 対象範囲の決め方(いきなり全社でやらない)
いきなり全工場で始めると破綻します。まずは1〜2エリア限定で回します。
おすすめの対象順:
- 通路・安全に影響する場所(仮置きが多い)
- ライン周り(仕掛・工具が増殖しやすい)
- 倉庫の一角(棚卸し不能ゾーン)
範囲の目安:
- まずは1ライン + 周辺2〜3m
- もしくは倉庫の棚2列だけ
② 赤札タグの項目(所有者、用途、最終使用日、期限)
赤札作戦が「貼っただけで終わる」と失敗します。重要なのは判断に必要な情報をタグに乗せることです。
赤札タグの必須項目(例):
- 物品名(例:M10ボルト、治具A)
- 現在の置場(棚番号/区画)
- 所有者(部署/担当者名)
- 用途(何に使うか)
- 最終使用日(いつ使ったか)
- 判定期限(30日後など)
- 判定区分(廃却/移管/売却/保管継続)
- 備考(保留理由)
ポイント:タグに「最終使用日」「期限」がないと、永久に保留になります。
③ 一時置場(赤札置場)の作り方
赤札は、貼ったら赤札置場へ移動させる設計が必要です(移動できない大型物を除く)。
赤札置場の作り方:
- 区画線を引く(例:3m×5m)
- 置場表示(大きく「赤札置場」)
- 管理責任者を決める(例:班長 or 総務)
- 置場ルールを貼る(保留期限、搬入方法)
赤札置場のルール例:
- 赤札が貼られた物は48時間以内に赤札置場へ
- 置場内は「期限順」に並べる(古い物が手前)
- 写真で記録(棚卸しと同じ考え方)
④ 判定会議の回し方(週1/隔週)
赤札作戦は、判定会議が回らないと必ず止まります。
おすすめは「週1回 15分」です。
判定会議の型:
- 開催:毎週金曜 15:00〜15:15(固定)
- 参加:製造責任者、現場リーダー、総務/管理、保全(必要に応じて)
- 議題:期限が来た赤札のみ判定(全部見ない)
- 形式:立ったまま、赤札置場の前で
判定の優先順位:
- 通路・安全を塞いでいる
- 探すムダが大きい
- 倉庫を圧迫している
- 期限超過
⑤ 処分の流れ(廃却/移管/売却/保管継続)
判定会議で決まったら、その日中に“次工程”を確定させます。ここが曖昧だと動きません。
処分フロー:
- 廃却:廃却伝票 → 産廃手配 → 搬出日設定
- 移管:移管先決定 → 定位置設定 → 置場表示
- 売却:リスト化 → 見積取得 → 引取日調整
- 保管継続:保管理由を明記 → 次回期限を再設定(延長は1回まで推奨)
不要物ルール(揉めない決め方)
① 判断権限(誰が捨てる判断をするか)
揉める工場ほど、権限が曖昧です。先にルール化します。
権限ルール例:
- 5万円未満:製造部長(または工場長代理)で廃却可
- 5〜30万円:工場長+管理承認
- 30万円以上:稟議(ただし期限は固定)
② 保留期限(例:30日/60日)
保留は悪ではありません。期限がない保留が悪です。
保留期限の例:
- 工具・消耗品:30日
- 治具・金型:60日
- 予備品・部品:90日(棚卸しと連動)
③ 例外の扱い(治具・金型・予備品)
例外を許すと崩壊します。例外は“条件付き”にします。
例外許可の条件(テンプレ):
- 使用設備名(どの機械で使うか)
- 保管定位置(置場表示あり)
- 使用頻度(例:月1以上)
- 責任者(誰が管理するか)
- 点検(定期パトロール対象)
④ “いつか使う”を排除する質問テンプレ
判定会議で揉めるのは、「いつか使う」です。潰す質問を定型化します。
質問テンプレ:
- 最後に使ったのはいつですか?(日付で)
- 次に使う予定はいつですか?(案件名で)
- 使うなら、どの設備・工程で使いますか?
- 代替品はありますか?
- 保管するなら、定位置はどこですか?置場表示できますか?
- 60日後も使わなければ廃却で良いですか?(YES/NO)
5S点検表テンプレ(コピペ用・現場で使える)
以下は、5S監査(点検・パトロール)でそのまま使えるチェック項目です。
「点数化」よりも、**×が出たら“次の行動が決まる”**ように設計してください。
整理(不要物・赤札)
- 不要物が通路・作業スペースに仮置きされていない
- 赤札タグが決めた基準で貼られている
- 赤札タグに所有者・用途・最終使用日・期限が記載されている
- 赤札物が48時間以内に赤札置場へ移動されている
- 赤札置場の区画線・置場表示が維持されている
- 保留期限を過ぎた赤札が放置されていない
整頓(定位置・置場表示)
- 工具・備品に定位置があり、置場表示されている
- 置場表示が現物と一致している(棚番号・区画)
- 物品がラベルと同じ向き・同じ場所に戻されている
- 仮置きエリアが定義され、ルールが貼られている
- 床置きが禁止されている物が床置きされていない
- 台車・パレットの定位置が決まっている
清掃(床・油・切粉)
- 床に油・切粉・粉じんが堆積していない
- 清掃道具の定位置が決まっている
- 清掃頻度(毎日/週次)が守られている
- 機械周辺にウエス・廃油・ゴミが散乱していない
- 排水溝・溝蓋周りが詰まっていない
清潔(標準・表示・写真)
- 置場表示・区画線が剥がれていない
- 定位置の基準写真が掲示されている
- 基準写真と現場の状態が一致している
- 工程内の“見える化表示”(注意・禁止)が最新
- 監査指摘の是正が完了し、再発していない
しつけ(ルール順守・教育)
- 赤札作戦ルール(期限・責任者)が周知されている
- ルール違反があった場合の是正フローが回っている
- 新人教育に5S(整理整頓・定位置)が含まれている
- 監査が「評価のため」ではなく「改善のため」で運用されている
- 各エリアに5S責任者が設定されている
- 改善提案が月1件以上出ている(現場改善の仕組み化)
赤札作戦が失敗するパターンと対策(5つ以上)
失敗①:赤札が貼られない
原因:貼る基準が曖昧/心理的ハードル
対策:基準を「迷ったら貼る」に統一。初回は“貼りすぎOK”。
失敗②:貼っただけで動かない
原因:赤札置場がない/移動ルールなし
対策:「48時間以内に移動」ルール化+責任者設定。
失敗③:赤札置場が倉庫化
原因:判定会議が開かれない/期限がない
対策:週1 15分固定。期限切れを最優先に処理。
失敗④:例外が多すぎる
原因:「治具だから」で全部例外扱い
対策:例外は“条件付き”。条件を満たさないものは赤札対象。
失敗⑤:点検だけで評価制度になり反発
原因:監査が“減点”運用で、現場が疲弊
対策:×が出たら「是正期限・責任者」を決める運用へ。点数より改善。
失敗⑥:責任者が不在(みんなの仕事)
原因:担当が曖昧
対策:エリア責任者を明示し、期限の管理者を固定。
遊休機械・不要設備が残り続ける理由と、処分が進む設計
機械は「大きい・重い・面倒」だから残る
遊休設備は、現場が怠けているから残るのではありません。
物理的に動かせない、段取りが面倒、誰がやるか決まっていないから残ります。
- 電源・配線・配管が絡む
- フォーク/クレーンが必要
- 搬出業者の手配が必要
- 置場を空けるにも整理が必要
危険(通路・安全)と監査(見える化)の観点
遊休設備が通路を塞ぐと、安全面で重大です。
また監査(社内監査・安全監査)でも「形骸化」の象徴として見られやすい領域です。
最低限の設計:
- 通路から隔離する
- 立入禁止表示
- 埃・油の清掃
- 現状写真(基準)を残す
- 赤札対象として期限管理
“撤去できない場合”の最低限(隔離・表示・清掃・写真)
撤去できない事情がある場合でも、放置は避けます。
撤去できない場合のテンプレ:
- 「撤去不可理由」明記(例:建屋改修待ち)
- 期限(例:90日)設定
- 管理責任者
- 区画線・表示
- 月1点検(写真で記録)
ここまでやれば「仕組みとして管理している」状態になります。
まとめ:5Sはイベントではなく運用設計(ルール×期限×責任者)
赤札作戦が成功する工場は、例外なく「仕組み」を持っています。
- ルール:何を赤札にするか/どう判定するか
- 期限:保留を放置しない仕組み
- 責任者:誰が動かすかの明確化
- 見える化:定位置・置場表示・写真・点検
5Sは気合いでは続きません。運用設計すれば、必ず回ります。
そして整理が回り出すと、整頓(定位置)が決まり、清掃が楽になり、現場改善が加速します。
遊休機械・不要設備の売却について
赤札作戦を進めていくと、最後に必ず残るのが「重くて動かせない物」「遊休設備」「撤去が面倒な機械」です。現場としては、ここが片付かないと通路が確保できず、定位置も作れず、5Sがまた形骸化してしまいます。
そこで、赤札対象の撤去・搬出・倉庫整理まで現場対応できる体制を持っておくと、整理が一気に進みます。実際、配線・配管が絡む設備の撤去や、重量物の搬出は「段取り」と「安全」がすべてで、現場任せにすると止まりやすいポイントです。
また、判定会議の結果「廃却」ではなく「売却」に回せる設備が混じっていることも珍しくありません。遊休機械・不要設備の中には、状態次第で再販ルートに乗り、処分費を圧縮できるケースがあります。売れる設備は相殺(買取)も可能です。



