売却したプレス機の行き先への疑問
長年使ってきたアイダエンジニアリングやコマツのプレス機械。
設備更新や生産性向上のため、手放す決断をされた経営者の方も多いでしょう。だが、いざ中古業者に売却するとして、ふと頭をよぎる疑問——「この機械、売った後はどこに行くんだろう?」
不要になったプレス機を売却して最新設備に入れ替えたいという企業様にとって、売却後の行き先やその先でどのように活用されるのかは、単なる興味にとどまらず、企業の社会的責任や安心感にも関わる問題です。
この記事では、日本の中古プレス機がどのようなルートで海外に渡り、特にインドでどのように活用されているのかについて、現場の実情をもとにお伝えします。
なぜインドが注目されるのか?
世界有数の製造大国を目指すインド
インドは現在、世界でも有数の製造大国を目指す国のひとつです。人口約14億人を抱える巨大市場であり、経済成長にともなって自動車産業や家電、金属加工などの製造業が急速に発展しています。中でもプレス加工業は、自動車、家電、建設資材など広範囲な産業にまたがる基幹的な技術として発展しています。
急成長する自動車産業とプレス需要
インド国内の自動車メーカー(タタ・モーターズ、マルチ・スズキなど)や欧米・日本の合弁企業が、インド市場をターゲットにした現地生産を加速しています。それに伴い、安価で信頼性の高い中古プレス機に対するニーズが増大しているのです。
日本製プレス機の高評価
日本製の機械は、耐久性・加工精度・保守性で非常に評価が高く、年式が古くても”日本製”というだけで価値があるとみなされます。国内では使われなくなった20年以上前のプレス機でも、インドでは「宝の山」として扱われるケースも珍しくありません。
特に「壊れにくく、精度が高い」「しっかりメンテナンスされている」「長寿命」などの理由から、海外バイヤーから厚い信頼を得ています。
輸出のルートと流れ
中古機械を扱う買取業者が買い取ったプレス機は、どのようにしてインドに渡っているのでしょうか?その流れをご紹介します。
1. 国内の買取業者による仕入れ
工場で不要となった機械を、買取業者が引き取りに伺い、現地での動作確認や積載準備を行います。400tや500tクラスの大型機の場合、解体や搬出に5~6日かかることもあります。
2. 港までの輸送とコンテナ詰め
横浜港や名古屋港などの港まで輸送され、コンテナに積み込まれます。ここで重要なのが、「コンテナに入るかどうか」という問題。大きすぎるプレス機や、一体型で分解できないものは、輸出そのものが難しい場合もあります。
3. 通関と輸出手続き
輸出にあたっては、税関の手続きが必要です。日本では中古工作機械の輸出に関して、安全保障輸出管理(キャッチオール規制)があります。法令を順守し、輸出管理国(北朝鮮・ロシアなど)には出荷しない体制を取る業者を選ぶことが安心につながります。
4. インドの現地バイヤーへ納入
インドの中古機械ディーラーや工場に到着後、整備され再稼働。現地の作業員により再設置・調整され、インドの町工場で新たな製品づくりを担います。
インドでの中古プレス機の活躍状況
中小工場での活用事例
インド国内の多くの町工場では、限られた設備投資の中で、高品質な加工を行うために、あえて中古の日本製プレス機を導入するケースが増えています。多少の不具合があっても、自社で修理・調整をして活用することが一般的です。
実際にインドでは、自動車部品メーカーの下請け工場で200トンクラスの中古プレス機を数台導入し、フレーム加工やプレス部品の量産に使用している例もあります。現地では、新品機を導入する予算が確保できない中、精度と耐久性を兼ね備えた日本製機械が頼りにされているのです。
現地での修理・メンテナンス体制
現地のエンジニアたちが、日本の中古機械を丁寧に修理・メンテナンスして使い続けている様子もあり、単なる「中古品」ではなく「現役の主力設備」として稼働しているのが現状です。
売却時の注意点とリスク対策
故障機械の取り扱い
中古のプレス機には、長年使用による摩耗や不具合があるケースも少なくありません。しかし、そうした状況でも海外向けであれば買取できることが多く、「故障=買取不可」とは限りません。
とはいえ、トラブルを防ぐために大切なのが「現状有姿」での売却契約です。つまり、「現在の状態のままで引き渡し、瑕疵担保責任は負わない」ことを明確に書面に残しておくことで、後々の返金要求やクレームを回避できます。
輸出規制とコンプライアンス
機械の輸出には、経済産業省が定める「キャッチオール規制」などが適用される場合があります。これは、機械が兵器など軍事用途に転用されるのを防ぐためのもので、輸出先や用途に応じて許可が必要なケースもあります。
特に北朝鮮、ロシア、イランなど、一部の規制国には輸出ができません。万が一、知らぬ間にそうした国に渡っていた場合、法的な責任を問われるリスクもゼロではありません。
そのため、輸出実績が豊富で、法令遵守の体制が整っている買取業者を選ぶことが重要です。
まとめ:中古プレス機の第二の人生
「売ったら終わり」ではなく、「海外で第二の人生を歩む」。それが、日本の中古プレス機の現実です。
日本国内では役目を終えたように見えるプレス機も、世界を見ればまだまだ必要とされています。特にインドのような成長市場では、日本製中古機は信頼性の高い機械として、多くの現場で使われているのです。
古いからといって諦めず、まずは海外輸出に対応した買取業者に相談してみることをおすすめします。輸出を前提とする業者であれば、古くても大型でも買取できる場合があり、日本国内の再販だけに頼る業者とは買取価格に差が出ることもあります。
買取から搬出、輸出手続きまでワンストップで対応し、輸出後のトラブルも回避できる体制を整えている業者を選ぶことで、安心して売却することができるでしょう。
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