【買取査定の舞台裏】特殊な工作機械の評価と、一般的な仕様が高く評価される理由

ご安心ください!全てを詳細に伝える必要はありません

この記事をご覧の皆様が、「機械の仕様は細かすぎてよく分からない」「機械の買取査定のために全てを伝えなければならないのか」と感じているのであれば、まずはお伝えしたいことがあります。

実は、査定にあたり、お客様に全ての情報を事前に確認していただく必要はございません。

私たちが最終的に現地で実機を確認いたしますので、正直なところ、重要な情報の伝え忘れがあったとしても、大抵の場合は対処可能です。

しかしながら、「これは当社の機械の中でも特殊な仕様だ」「もしかしたら、この情報がないと困るかもしれない」と思われる部分については、事前にご申告いただけますと大変助かります。それが、より正確でご納得いただける査定額に繋がることも少なくありません。

本稿では、機械の「仕様」が買取査定にどのように影響するのか、そしてどこまでの情報が必要とされるのかを、具体的なエピソードを交えながら詳しく解説してまいります。


カタログ情報だけでは見えない、査定額の落とし穴

特に、機械を30台、40台と所有されている会社様。台数が多いゆえに、1台ずつのことはしっかり記憶していないことが多いです。

「当社が所有するマザックの〇〇であれば、スペックは自ずと決まっているだろう」と思いこんではいませんか?その思い込みが、時に査定額の評価に影響を及ぼすことがあります。

特に、一般的な仕様の機械ほど市場での評価が高いという点は、ぜひご理解いただきたいポイントです。


銘板がない機械は、なぜ「大問題」なのか?

以前、お客様の工場にお伺いした際のことです。査定対象の機械に肝心の**「銘板」**が見当たらない状況でした。お客様からは「作業の邪魔になるため外したが、どこかにあるはずだ」とのお話がありましたが、結局見つからずじまいでした。

皆様にはあまり馴染みがないかもしれませんが、これは機械の買取において非常に大きな問題となります。銘板がないということは、その機械の正確な製造年、型式、シリアルナンバーが不明であることを意味します。

結果として、メーカーからの部品供給や適切なメンテナンスが困難になり、日本国内での再販が極めて難しくなります。買い手側も将来的なリスクを考慮し、購入をためらう傾向が強いため、結果的に査定額が大幅に下がってしまう要因となるのです。

もちろん、昭和期の非常に古い機械であればやむを得ない場合もありますが、平成以降に製造された比較的新しい機械の場合、銘板は必ず必要です。もし取り外されている場合は、保管されている可能性が高いので、念のためお探しいただくことをお勧めいたします。


同じ型式でも「別物」?モデルチェンジがもたらす差異

例えば、同じ「VM5」という型式であっても、2010年製と2015年製では、XYZストロークや搭載されている制御盤のモデルが異なるケースが散見されます。

「カタログに記載されている情報だから正しい」という思い込みで話を進めてしまうと、いざ現地での実機確認の際に「想定していた仕様と異なる」という状況が生じることがあります。

このような認識の齟齬は、査定額の再交渉に繋がり、お客様にとっても余計な手間や心証の悪化に繋がりかねません。

ある程度の情報をご提供いただければ問題ありませんので、**「大まかな仕様はこれだが、詳細については現地で確認してほしい」**というスタンスでお伝えいただけますと幸いです。


査定のカギは「基本仕様」と「市場性の高い仕様」

どのような情報を提供すれば良いのか、迷われる方もいらっしゃるでしょう。専門家レベルの詳細な知識は全く必要ありません。

以下に、主要な工作機械における一般的な仕様項目をまとめましたので、ご存知の範囲でお伝えいただければ十分です。

ここで特に強調したいのは、**「一般的な仕様の機械ほど評価が高くなる」**という点です。これは、一般的な仕様の機械は、それだけ多くの製造業のニーズに合致し、市場での需要も高いためです。

つまり、買い手が見つかりやすい機械は、私たち買取業者としても強気の査定を提示しやすくなる、という論理に基づいています。


マシニングセンタ

  • XYZストローク(加工可能範囲): 加工対象物のサイズに直結する基本情報です。
  • 主軸テーパ(BT40など): 取り付け可能な工具の種類を示します。
  • 回転数(例:12000rpm): 高速加工能力の指標となります。
  • テーブルサイズ、積載重量: 加工可能なワークの大きさや重量に影響します。
  • 制御装置(FANUC Professional 5など): 機械の頭脳部分であり、操作性や機能に大きく関わります。

NC旋盤

  • チャックサイズ(6インチ、8インチなど): 加工対象物の把握径に影響します。
  • 心間、最大加工径: 加工可能なワークの長さと直径を示します。
  • 貫通穴径、心押し台の有無: 長尺ワークの加工において重要な情報です。

射出成形機

  • 型締力: 金型を閉じる力の最大値です。
  • スクリュー径: 金型に射出される樹脂の量を決定する要素です。

プレス機

  • 能力(ton): 成形能力の指標となります。
  • ストローク長、ダイハイト: 加工の深さや金型のセットアップに関わります。
  • ボルスター寸法: 金型を設置する部分のサイズです。

オプション・付属品の有無が、査定額を左右する

見落とされがちですが、チップコンベア、ミストコレクター、そしてクーラント(切削油供給装置)の有無といったオプションや付属品も、査定額に少なからぬ影響を与える重要な要素です。


FANUCロボドリル10台の一括査定で発生した想定外の減額

数年前、FANUC製ロボドリルを10台まとめて査定してほしいというご依頼がありました。送付いただいた写真からは、どの機械も状態が良く、外観上も同一に見えましたので、高額査定を期待して現地へ向かいました。

しかし、いざ実機を確認したところ、想定外の事実が判明しました。

「クーラントユニットがない機械が3台混じっている…!」

写真では判別が困難でしたが、10台中3台にクーラントユニットが装備されていなかったのです。このクーラントユニットは、新品で導入すると1台あたり約30万円の費用がかかります。結果として、当初提示した見積額から合計で90万円の減額を余儀なくされました。

しかしながら、お客様は気分を損ね、最終的には弊社で減額分の一部を負担することで対応いたしました。

このように、クーラントの有無は査定に大きく影響するポイントです。特にロボドリルのような機械では、クーラントが標準装備されていると認識されがちであり、欠品していると買い手側は「追加で費用がかかる」と判断し、購入に二の足を踏んでしまいます。

そのため、こうしたオプション品の有無は、できるだけ事前にご申告いただけますと幸いです。これにより、双方にとって円滑な取引が可能となり、お客様にとっても不本意な減額を避けることにも繋がります。


中堅・廃業メーカーの機械は、「情報」が価値を決める

マザックや森精機のような大手メーカーの機械であれば、私どもも豊富な知識や過去の査定データ、そしてカタログ情報などを有しております。

しかしながら、世の中には**「現在ではカタログの入手が困難」「既に事業を停止している」**といったメーカーの機械も多数存在します。例えば、以下のようなメーカーの機械が該当します。

  • キタムラ機械
  • 武田機械
  • 倉敷機械
  • 遠州、ワシノ、松浦、高松、野村 など

これらの機械については、売主様からの情報が査定において極めて重要となります。主軸テーパがHSKなのかBTなのか、貫通穴径はいくつなのか、ツールチェンジャーの本数は何本なのかといった具体的な仕様が不明瞭ですと、買い手側も機械の性能や用途を正確に判断できず、購入をためらう傾向にあります。

結果として、買い手が見つかりにくくなり、査定額が伸び悩むケースも少なくありません。もし、これらのメーカーの機械をお持ちで、詳細な仕様がわかる資料(購入時のパンフレットや取扱説明書など)がお手元にあれば、ぜひご提供ください。適切な情報があることで、機械の真の価値を最大限に引き出すことが可能となります。


改造や後付け装置は、「説明の可否」が鍵となる

最後に、機械に後付けの装置を取り付けたり、自社で改造を施したりしている場合についてです。

例えば、

  • 主軸オイルクーラーを追加した
  • ミストコレクターを汎用品で後付けした
  • 操作盤にスイッチを増設した

といった事例です。これらは一見すると利便性の向上に繋がると考えがちですが、関連する書類や図面がなく、かつ**「なぜ、どのように改造したのか」を明確に説明できない場合、マイナス評価となる可能性**があります。これは、買い手側が「安全性や動作保証に関する懸念」を抱くためです。

しかし、ご安心ください。**「〇〇の作業効率を改善するために、このように改造した」といった具体的な説明が可能であれば、問題ありません。**少々手間に感じるかもしれませんが、簡単なメモ書きでも構いませんので、そうした情報をご提供いただけると、私たちも安心して買い手にアピールでき、機械の価値を適正に評価することが可能となります。


重要な点は「共有」を、あとは私たち専門家にお任せください

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。改めて、今回の重要なポイントをまとめさせていただきます。

  • 査定にあたり、全ての情報を詳細に伝える必要はございません。
  • 最終的には現地で実機確認を行うため、多少の伝え忘れがあっても大抵の場合は対処可能です。
  • しかしながら、クーラントの有無や銘板の有無といった「重要な情報」については、可能な範囲で事前にご申告いただけますと、非常に円滑な査定が可能です。
  • そして、一般的な仕様の機械ほど市場での需要が高く、結果として高額査定に繋がりやすい傾向にあります。

私たち機械の買取業者は、お客様が大切にご使用されてきた機械が、次の現場でも十分にその価値を発揮できるよう、最善の橋渡しをすることを使命としております。お客様の機械に対する想いや、これまで積み重ねてこられた歴史もしっかりと受け止め、最適なご提案をさせていただきます。

ご不明な点やご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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