年式は査定の出発点
中古機械の買取業者を利用する際に、必ず確認されるのが**製造年(年式)**です。これは、車を売るときに年式を聞かれるのとまったく同じ。
ただし、ひとつだけ注意していただきたいのは、中古機械の場合は自動車ほど「10年の壁」が極端ではないということです。9年落ちと10年落ちでガクンと値段が落ちる──そんな単純な世界ではありません。
それでも、やはり5年落ちと10年落ちでは明確な査定差が出るのが現実です。そして、15年以上経過すると、ほとんどの機械で市場価値は急降下します。さらに15年と20年でも、大きな差が生まれるケースが珍しくありません。
これにはしっかりとした理由があります。
古い機械が評価されにくい本当の理由
中古機械市場では、単に「古いから価値が下がる」という単純な話ではありません。そこには明確な市場ロジックがあります。
1. 後継機種に性能差で見劣りするから
技術の進化は速いもの。10年、20年も経てば、後継機種はより高精度・高速・高効率になっています。消費電力も少なくなり、操作性も向上しているため、古い機械はどうしてもあらゆる面で見劣りしてしまうのです。
エンドユーザーも当然、できるだけ新しい機械を選びたがる傾向があり、古い機械は選択肢の後ろの方に追いやられてしまいます。
2. 経年劣化のリスクが大きいから
製造から20年も経てば、たとえ外観がきれいでも、内部では配線の劣化、潤滑系の疲弊、モーターや基板の劣化が進んでいる可能性が高いです。
「10年落ちならまだ20年使えるかもしれない」が、 「20年落ちだと、あと10年持つかどうかも怪しい」 ──これが現場のリアルな感覚です。
使い続けるリスクが高い古い機械は、やはり慎重に選ばれるため、需要が減り、結果として買取価格も大きく下がってしまうのです。
3. 古い機械を買うのは“消極的な理由”が多い
実は、積極的に「古い機械が好き」という人は非常に少数派です。多くの場合、
- 予算が足りないから仕方なく
- 新型だと操作方法が変わってしまうので不安だから
- どうしてもこの型式でないとできない仕事が残っているから
──という、消極的・妥協的な理由で古い機械を選んでいるのです。
つまり、市場全体として古い機械へのニーズは弱く、価格も厳しくなりやすいのが現実なのです。
売主の「愛着」と市場の「価値」は違う
ここで少し本音を言わせてください。
「うちの機械は大事に使ってきたから、きっと高く買ってもらえるはずだ!」
──そうおっしゃる売主様は本当に多いです。長年一緒に頑張ってきた機械に愛着が湧くのは当然。気持ちはよくわかります。
でも、機械の世界は冷酷です。どれだけ大事にしてきたかではなく、市場価値があるかどうかで価格は決まります。
そして、驚くべきことに、
- 「ほとんど使わなかった」「短期間で手放すことになった」機械のほうが、
- 「長年愛着を持って使った」機械より、
はるかに高く売れることの方が多いのです。
これは、決して感情を否定しているわけではありません。事実として、「年式が新しい」「稼働時間が短い」「状態が良い」──それだけで、市場が求める商品になるからです。
だからこそ、機械を高く売りたいなら、少しでも新しいうちに、良い状態で売却することが鉄則なんです。
銘板を必ず写真に撮るべき理由
さて、ここからは実践編です。
機械の製造年を正確に把握するためには、銘板(ネームプレート)の写真を撮ることが一番確実です。
なぜそこまで銘板にこだわるのか?
理由はシンプルです。売主様の「記憶違い」が、思った以上に多いからです。
「確か2010年製だったと思う」
そう言われて銘板を確認すると、実際は2005年製──こんなケースは本当に日常茶飯事。売主様に悪気があるわけではありません。ただ、購入した時期や、設備導入時期と、製造年がズレていることはよくあるのです。
このズレがあると、見積額も査定後の最終交渉も、すべてやり直しになるリスクがあります。
だからこそ、最初から銘板写真をいただくことが、お互いのために一番スムーズなのです。
銘板写真で得られるメリット
銘板を写真に撮っていただくことで、査定や売却がスムーズになります。
まず、型番や製造年、製造番号といった基本情報を正確に把握できるため、機種間違いによるトラブルを未然に防ぐことができます。
さらに、銘板には仕様やオプション情報が記載されていることもあり、機械のスペックや特別仕様を正確に読み取ることができる場合があります。
さらに、売主によっては銘板を外して処分してしまっているケースがあります。銘板というのは製造番号が書かれており、メーカーが正式に製造販売した機械だという証です。
そのため銘板の無い機械は、メーカーがアフターサービスを断るケースがあります。そうなった機械には誰も見向きもしません。あなたも壊れたら終わりの機械なんて買いませんよね?
つまり、機械買取業者が銘板の写真を送って欲しいというのは、銘板があるか、無いかを確認するためでもあります。
銘板撮影時のポイント
銘板写真を撮る際は、以下を意識してください:
- できるだけ明るい場所で撮影(暗いと文字がつぶれやすい)
- ピントをしっかり合わせる(数字が読み取れないと意味がない)
- 銘板全体が写るようにする(一部だけだと型番が見えないことも)
- 汚れやサビは軽く拭き取る(無理にこすらないよう注意)
最近のスマホカメラなら十分きれいに撮影できますので、特別な機材は不要です。あまりに汚れていて文字が見えない場合は、光を斜めから当てたり、カメラの露出補正を使うと意外と読みやすくなります。
もしそれでも難しい場合は、後述する「代替手段」を使えば大丈夫です。
写真が撮れないときの代替手段
「銘板が奥まった場所にあって撮れない…」
「暗いし狭いし、スマホが入らない…」
そんな場合でも、焦らないでください。代わりに、以下の書類を探してみましょう。
- 購入時の納品書(出荷年月日が記載されていることが多い)
- 仕様書(スペックと一緒に製造年が書かれていることがある)
- 取扱説明書(特に冒頭や裏表紙に製造番号・製造年があることが多い)
これらの書類は、工場の事務所や倉庫に残っていることが多いので、一度探してみてください。
こうした補助情報でも、十分に査定可能な場合がほとんどです。
実例紹介:たった数年でここまで差が出た!
ここからは、実際の事例をご紹介しましょう。
同じ型番のマシニングセンタ「OKK VM7 III」の査定依頼を、別々のお客様から受けたことがあります。
- ケースA:2011年製、美品、搬出経路も良好
- ケースB:2011年製、使い込みあり、搬出困難な設置場所
結果、査定金額に約200万円の差がつきました。
「えっ、同じ年式なのにそんなに違うの?」と思うかもしれません。でも、これがリアルな中古機械の世界です。
年式は大切。でもそれだけではない。状態、設置環境、搬出のしやすさ、これら全てが積み重なって、最終的な査定額に反映されるのです。
年式が曖昧なまま査定を進めるリスク
「だいたい10年くらい前に買ったから…」
そんな曖昧な情報だけで査定を進めると、次のようなリスクが発生します。
- 見積後に実際の製造年が違うと、査定金額が大幅に変わる
- 最悪の場合、査定自体がキャンセルになる
- 売却予定スケジュールに大きな遅れが出る
つまり、最初の段階で銘板を確認しておくことが、後々のトラブル防止につながるのです。
これは、売主様にとっても、買主にとっても、どちらにとってもメリットのある「小さな準備」です。
古い機械でも「価値がある」ケースとは?
ここまで読むと、「古い機械は全部ダメなのか」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
たとえば、
- 20年前の機械でも、稼働時間が非常に少なく、主軸やテーブルもきれい
- 1年に数回稼動する程度で、外観も油汚れなどがなくきれい
- 特殊な仕様やオプション付きで、今も一定のニーズがある
こうした条件が揃っていれば、古い機械でも思わぬ高値がつくこともあります。
ただし、その場合も「製造年」がわかっていることが大前提。
結局、銘板確認ができているかどうかが、すべての出発点になるのです。
【まとめ】銘板チェックは、未来のための準備です
- 中古機械の価値は、年式×人気度x状態×搬出条件で決まる
- 銘板を写真に撮れば、査定スピードも精度もアップ
- 写真が無理でも納品書・仕様書・説明書でカバーできる
- 記憶に頼らず、”実物確認”を徹底することがトラブル回避につながる
- ほんの一手間が、数十万円〜数百万円の差を生むこともある
大切な機械を、少しでも正当に、少しでも高く評価してもらうために。まずはスマホ片手に、「銘板チェック」から始めましょう!
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