今、製造業の構造が大きく変わろうとしています。その主役のひとつが、EV(電気自動車)と再生可能エネルギー関連市場です。
この変化は、単に新しい製品が登場するという話ではありません。これまでの内燃機関向け部品加工から、全く異なる特性と要求品質を持つ部品への対応が求められる時代が来たということ。つまり、プレス加工会社にとっても「今の延長では立ち行かない」時代の到来を意味しています。
EV・再エネで何が変わるのか?
これまで自動車業界で中心的だったのは、エンジン、トランスミッション、排気系部品といった高強度部品の加工でした。
しかし、EV化によってその中心は「モーター」「バッテリー」「制御系」「筐体」にシフトします。
たとえば:
- モーターコア(電磁鋼板積層):0.2mm前後の薄板を、精密な抜き加工で連続生産。
- バッテリーセパレータ:薄いアルミやステンレスの極細流路形成。
- 筐体部品:アルミや複合材を使用した軽量・複雑形状の深絞りやカバー形成。
- 充電・電装部品:放熱性・絶縁性・複雑構造への対応が必須。
再エネ関連では、太陽光パネルのフレーム、蓄電池設備の外装、風力発電装置の制御盤など、大型かつ高精度が求められる案件が増加しています。
これらの製品に共通するキーワードは:
- 薄板加工への高い対応力
- 多品種・中ロット・短納期
- 多工程処理と一貫対応
- 工程の見える化・品質トレーサビリティ
これらに対応するためには、旧型のクランクプレスでは明らかに機能が不足しています。サーボ制御プレスの導入、周辺装置の自動化、IoT連携による生産管理といった“未来対応型の加工体制”が求められているのです。
セパレータ加工の超微細・高速・大量対応
EVバッテリーの内部で重要な役割を果たすのが、金属セパレータです。これは非常に薄いアルミやステンレス材に微細な流路や穴を精密に打ち抜く加工が必要です。
このようなセパレータ加工では:
- 素材厚み0.1mm以下
- 形状精度±0.01mmレベル
- 微細バリのない加工面
- 1分間に数百ショットが可能な生産性
といった、かつての常識を超える仕様が求められます。
サーボプレスではスライドの動作を最適化できるため、流路部においてはゆっくりと圧をかけ、戻り動作は高速で行う、といったモーション制御が可能です。これは従来のクランク機では実現できません。
また、量産に対応するためには自動材料送り機構・高速搬送ロボット・不良検出センサー・加工条件の記録・再現性といった要素も不可欠です。
加えて、EV市場は各国の法規制や安全基準によって部品単体の信頼性が厳しく問われるため、1ロット中の1個の不良すら許されない品質管理体制が必要となります。
このような背景から、セパレータ分野の仕事を取るためには、単なる技術力だけでなく、設備投資の覚悟とそれに伴う生産体制の改革が求められるのです。
モーターコア加工と積層精度の重要性
モーターコアとは、電磁鋼板を100枚〜数百枚積層し、回転子・固定子のコアを構成する部品です。この部品はモーターの性能そのものを決定するもので、回転効率・発熱・ノイズ・消費電力などに直結します。
そのため、プレス加工には極めて高度な精度が求められます。
- 0.2mm前後の電磁鋼板を高速連続で打ち抜く
- パンチの摩耗や温度変化による誤差を自動補正
- 積層時にズレのない打ち抜き精度
- スリット部のバリ防止と微細端面品質の確保
これらをクリアするには、サーボプレスによるスライド制御+金型温度管理+高精度材料送り+荷重モニタリング機能といったハイエンドな機能群が不可欠です。
さらに、積層前後の検査工程・画像認識による精度確認・NG品自動分離など、前後工程の自動化も視野に入れたライン設計が求められます。
こうした体制を取れない工場は、EVモーター部品のTier1やTier2サプライヤーからの受注条件を満たせないことになります。
つまり、「旧式機械でもなんとか作れるだろう」という時代はすでに終わっており、対応できなければ、案件にすら入れない時代が始まっているのです。
再エネ分野でのプレス需要も確実に拡大
EVと並び、成長が著しい分野が「再生可能エネルギー関連」です。太陽光発電、風力発電、蓄電池システムなど、再エネインフラの構築には多種多様な金属部品が必要とされており、ここにもプレス加工の重要な役割が存在します。
たとえば、
- 太陽光パネルのフレーム・ブラケット:長尺アルミ材の穴あけ・曲げ・打抜きが中心。耐候性・高剛性が求められます。
- 蓄電池筐体:大型で平滑な成形面が必要。防水性や気密性、熱放散性能も重視される。
- 風力発電制御装置の外装・ベースプレート:ステンレスや耐食材を使用した多工程加工。
- EV充電スタンドの筐体・機構部品:鋼板、アルミ板の組み合わせで、美観性と耐久性が同時に必要。
これらの部品では、1品1様の設計に応じて短納期かつ多品種対応が求められ、設備の柔軟性が非常に重要となります。
つまり、今後の市場では「量産対応力」だけでなく「一品一様への対応力」も同時に問われるようになるのです。
このような高難度加工や混流生産には、トランスファーライン対応のプレス機や、金型交換の自動化、加工条件のプリセット化といったシステム整備が必要不可欠です。
設備投資をためらうことの“コスト”を見直す
多くの現場経営者が「今の機械でもなんとか回っている」「投資は慎重に」と感じるのは当然のことです。
しかし、ここで注目すべきなのは、“投資をしないことで毎日積み上がるコスト”です。
- 段取りに1日2時間かかる → 年間500時間の生産ロス
- 微細加工で不良率2% → 材料・時間・信頼の損失
- 金型交換が重労働 → 作業者の定着率低下
- 取引先からの要求水準に応えられない → 見積もりすら依頼されない
これらの見えないコストが、じわじわと経営を圧迫している現実を見逃してはなりません。
一方、サーボプレスや自動搬送装置などの設備更新によって:
- 段取り時間の大幅短縮
- 不良率の低減
- 作業者の省力化・安全性向上
- 高難度・高単価案件への対応力
といった効果が現れ、短期間で投資回収が可能になる事例も多数あります。
また、ものづくり補助金・先端設備等導入計画・税制優遇措置など、導入コストを抑える制度も活用できます。
今導入しなければ、次の案件に入れない可能性も
EVや再エネ関連の案件では、設備仕様が取引条件に含まれていることが増えています。
たとえば:
- 「サーボ制御プレスを使用していること」
- 「加工データの保存・出力ができること」
- 「トレーサビリティ対応の生産体制であること」
といった要件が、すでに見積・提案の段階で必須とされるケースが多く、古い設備しか持たない企業は、入札・商談の土俵にすら上がれない現実があるのです。
つまり、設備更新は“効率を上げるため”ではなく、“案件に参加できる最低条件”になりつつあります。
次の10年を生き抜くための決断を
EVと再エネは、これからの10年、20年にわたって日本製造業の中心的テーマとなります。 その波に乗るか、取り残されるかは、今このタイミングでの決断にかかっています。
- 自社の強みを新市場で活かせるのか?
- そのために、設備と体制は整っているか?
- 古い設備を資産として手放し、次の投資に踏み出せるか?
これらの問いに対して、「まだ動くから」「なんとかやれているから」といった思考でとどまるのではなく、 未来の案件・未来の顧客・未来の競合を見据えた経営判断をすることが重要です。
御社の設備が、未来の売上を生む源泉であることを、今一度見直してみてください。
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