FA業界で一人負けのオムロン。なぜキーエンスと大きな差がついたのか?Webマーケティングの面から考察してみる

はじめに

FA(ファクトリーオートメーション)業界において、かつてのリーディングカンパニーであるオムロンが、近年、キーエンスとの間に大きな業績の差を生んでいます。FA機器を手がける企業としてはどちらも長い歴史を持ち、品質にも定評がありますが、なぜこれほどまでに業績に差がついてしまったのでしょうか?

この動画では、その要因を「ビジネスモデル」「市場戦略」「マーケティング戦略」「企業文化」という4つの視点から分析し、さらにWebマーケティングの違いにどのように現れているのかを解説していきます。

そして、この分析を通じて、キーエンスが単に広告を出すだけではなく、Webマーケティングを「市場調査ツール」として活用している可能性があることを深掘りします。最後には、中小の製造業がこの考え方をどう活かせるのかをお話ししますので、ぜひ最後までご覧ください。


オムロンの近年の業績

オムロンは、PLC(プログラマブルコントローラ)やセンサ、安全機器など、FA業界において幅広い製品を展開してきた大手企業です。特に日本国内では、長年にわたって安定した業績を維持し、製造業の自動化に貢献してきました。

しかし、近年の業績推移を見てみると、FA事業の成長が鈍化していることがわかります。売上は横ばい、利益率も10%前後で推移しており、大幅な成長は見られません。これは、国内市場の成熟化や競争の激化が影響していると考えられます。

また、海外市場においても、キーエンスや欧米の競合メーカーに対して優位性を発揮しきれておらず、シェア拡大のスピードが鈍いことが課題となっています。


キーエンスの近年の業績

一方、キーエンスは驚異的な成長を続けています。直近の売上推移を見ると、右肩上がりの成長を維持しており、何よりも特筆すべきは営業利益率50%以上という圧倒的な高収益体質です。

製造業でここまでの利益率を確保できる企業はほとんどなく、これは単に売上を伸ばしているだけではなく、極めて効率的なビジネスモデルを持っていることを示しています。

海外市場でも積極的な展開を行い、欧米やアジア市場での売上比率を高めていることも特徴です。特に、中国市場では現地の製造業向けに精密測定機器や画像処理技術を提供し、高い評価を得ています。


2社を比べると大きな差がついている

こうしてオムロンとキーエンスの業績を並べてみると、売上・利益の伸び方、営業利益率、市場拡大のスピードといったあらゆる面でキーエンスが優位に立っていることが明確です。

一昔前までは「FA業界のオムロン」と言われていた時代もありましたが、現在では「キーエンス=高収益企業」というイメージが確立されつつあります。

では、なぜここまでの差が生まれたのか?その背景には、ビジネスモデル・市場戦略・マーケティング戦略・企業文化の4つの要因があると考えられます。


差がついた4つの要因

1.ビジネスモデルの違い

キーエンスは「直販モデル」を採用しており、エンドユーザーと直接やり取りをすることで、より高付加価値の製品を提供し、高い利益率を実現しています。一方、オムロンは「代理店経由」での販売が中心となっており、最終顧客との距離が遠く、価格競争に巻き込まれやすい構造になっています。

2.市場戦略の違い

キーエンスは「高付加価値市場」に特化し、測定・検査機器など利益率の高い分野に集中しています。それに対してオムロンは、PLCやリレーなど幅広い製品を展開しており、競争が激しく、単価が低くなりやすい傾向があります。

3.マーケティング戦略の違い

キーエンスはWebマーケティングを徹底活用し、Webからのリード獲得を重視しています。オムロンは従来の代理店ネットワークを重視しており、Webマーケティングの活用度は低めです。

4.企業文化の違い

キーエンスは「成果主義」を徹底し、営業担当者に高いインセンティブを与えることで、圧倒的な営業力を維持しています。一方、オムロンは比較的安定した組織体制を取っており、成長よりも持続性を重視する文化が根付いています。


キーエンスとオムロンのWebマーケティングから透けて見えるもの

FA業界において、キーエンスとオムロンはどちらも歴史ある企業ですが、近年ではキーエンスが圧倒的な高収益を実現し、オムロンとの差が拡大しています。その要因の一つとして、Webマーケティングの戦略の違いが大きく影響していると考えられます。

本章では、キーエンスとオムロンのWebマーケティングを比較しながら、その違いを具体的に分析し、どのような要素が売上や企業成長に影響を与えているのかを解説します。


キーエンスのWebマーケティングの特徴

1. Webサイトの設計とコンバージョン導線

キーエンスのWebサイトは、シンプルで無駄のない設計になっています。最大の特徴は、「問い合わせ・資料請求」などのコンバージョンポイントが明確であることです。

例えば、キーエンスの製品ページを見ると、以下のような要素が目立ちます。

  • 製品の特徴やメリットを、簡潔な言葉で説明している
  • 各ページに、「無料デモの申し込み」「技術相談」「カタログ請求」などのCTA(コール・トゥ・アクション)が明確に配置されている
  • フォーム入力の手間を最小限にし、問い合わせをしやすくしている

このような設計により、訪問者がサイトを閲覧するだけでなく、実際に問い合わせへと進む確率が非常に高まる仕組みになっています。

2.リスティング広告の戦略

キーエンスは、リスティング広告(Google広告、Yahoo広告など)にも積極的に投資しています。しかし、その広告の打ち方に工夫が見られます。

多くの製造業の広告は、価格や機能を説明したものが多いですが、キーエンスは「顧客の課題解決」に焦点を当てた広告文を活用しています。

3. SEOとコンテンツマーケティング

キーエンスは、リスティング広告だけでなく、SEO(検索エンジン最適化)にも力を入れています

具体的には、単なる製品説明ページだけでなく、「お客様の課題を解決するためのコンテンツ」を豊富に用意しています。

例えば、「測り隊.com」という、厚み・幅・外径などの測定ノウハウを学べるサイトや、「センサとは.com」という9つのセンサを原理と特徴から解説するサイトを運営していますが、ここでは商品の宣伝を表に出していません。

こうしたコンテンツは、ターゲットユーザーが検索しそうなキーワードを盛り込みながら設計されており、結果としてオーガニック検索からの流入が増加し、リード獲得につながるのです。


オムロンのWebマーケティングの特徴

オムロンのWebサイトは、キーエンスとは異なり、製品情報の詳細が充実している点が特徴です。

しかし、問い合わせや資料請求への誘導が弱いという課題があります。

  • 製品の仕様やカタログ情報が充実しているが、CTAの配置が目立たない
  • 製品ページは詳細な説明があるが、**「この製品を導入すると何が改善されるのか」**といったメリット訴求が少ない
  • フォームが長すぎるため、問い合わせを途中でやめてしまう可能性が高い

そのため、サイト訪問者が「知りたい情報は得られるが、その先のアクション(問い合わせや資料請求)につながりにくい」構造になっています。

Webマーケティングの違いが業績に直結する理由

キーエンスは、Webマーケティングを通じて「顧客の課題を解決する」という視点を持っています。一方、オムロンは「製品情報を伝えること」に重点を置いているため、顧客との距離が広がりやすくなっています。

この違いが、問い合わせ数の差、リード獲得数の差、ひいては売上の差へとつながっているのです。

また、キーエンスはリスティング広告から得られる検索データ(ユーザーの検索意図や市場の関心の動向)を商品開発や営業戦略に活かしている可能性が高いです。これにより、市場のニーズにいち早く対応し、新製品を投入しやすい環境を作っています。

つまり、キーエンスはWebマーケティングを「広告」ではなく「市場調査ツール」として活用し、企業戦略全体に組み込んでいるのです。


検索データを商品開発や営業戦略に活かすキーエンス

キーエンスのWebマーケティングは、単なる広告の出稿にとどまらず、市場調査・競合分析・商品開発・営業戦略の最適化といった広範な領域に影響を及ぼしていると考えられます。単なる「問い合わせを増やすための施策」ではなく、データを活用して市場全体を把握し、自社のビジネス戦略に活かすマーケティング手法がキーエンスの強みです。

本章では、キーエンスがWebマーケティングをどのように活用しているのか、外からは見えにくい「裏側」の戦略について詳しく解説していきます。


市場調査ツールとしての活用

一般的に、リスティング広告(Google広告やYahoo広告)は「顧客に自社の製品を知ってもらい、問い合わせを増やす」ために使われます。しかし、キーエンスはリスティング広告を単なる集客ツールではなく、膨大な検索データを取得する市場調査ツールとして活用していると考えられます。

例えば、Google広告の管理画面では、広告が表示された検索キーワード(検索クエリ)や、クリックしたユーザーの属性(性別・年齢・地域)などを細かく分析できます。キーエンスはこれらのデータを蓄積し、以下のような形で活用している可能性が高いです。

  1. 顧客がどのような課題を抱えているのかを分析する
    例えば、「精密測定機器」と検索されるよりも、「精密測定 時間短縮」や「測定ミス 防止」といったキーワードのほうが多い場合、ユーザーは「測定のスピード向上」や「測定の精度向上」に強い関心を持っていることがわかります。
  2. 競合が狙っている市場領域を把握する
    競合他社の製品名やブランド名を含む検索クエリがどの程度あるかを分析し、「どの製品が市場で注目されているのか?」を把握します。たとえば、オムロンや三菱電機の型番や製品名でどのくらい検索されているかというデータも得られます。これにより、キーエンスは「競合が強い分野」と「まだ十分に攻められていない市場」を見極めることができます。
  3. 新製品開発のヒントを得る
    「〇〇の測定方法」や「△△の検査システム」といったキーワードが増えている場合、市場は新しい技術や測定方式を求めている可能性が高い。キーエンスはこのようなデータをもとに、新たな測定機器やセンサを開発する方向性を決めることができるでしょう。

Webマーケティングデータを営業戦略に統合

キーエンスは、データドリブンな営業戦略を採用しており、Webマーケティングで得られた情報をリアルな営業活動に反映させていると考えられます。

例えば、以下のような連携が考えられます。

  1. 検索クエリの傾向に基づいて、営業チームがアプローチすべき業種・企業を特定する
    例えば、「食品工場 測定機器」という検索が急増している場合、キーエンスは食品業界向けの営業活動を強化することができます。
  2. Webサイトで収集した顧客情報を営業チームに即時共有
    キーエンスのWebサイトでは、問い合わせや資料請求のデータが即座に営業担当者へ共有され、短時間でフォローアップできる仕組みが整っています。これにより、見込み客の関心が高いうちに営業アプローチが可能になります。
  3. 競合分析データを営業戦略に活かす
    競合他社の製品が多く検索されている場合、その製品の弱点を把握し、それをカバーする提案を営業担当者が行うことができます。

こうした取り組みにより、キーエンスは「単に広告を打つだけでなく、マーケティングデータをリアルな営業活動に活かし、売上の最大化を図っている」と言えるでしょう。

中小企業がキーエンスのWebマーケティングから学べるもの

キーエンスは、単に製品を売るだけでなく、Webマーケティングを「市場調査ツール」として活用しながら、新規顧客の開拓や商品開発に結びつける戦略を展開していると想像されます。これを中小企業が参考にすることで、限られたリソースでも効率的に営業活動を強化し、競争力を高めることができます。

ここでは、中小の製造業がキーエンスのWebマーケティングから学ぶべき具体的なポイントについて詳しく解説していきます。


「市場調査ツール」としてのWebマーケティング

多くの中小企業は、Webマーケティングを「問い合わせを増やすための広告」として捉えがちですが、「市場調査ツール」としても活用することができます。

例えば、Google広告を出稿すると、検索クエリ(ユーザーが実際に検索した言葉)が取得できます。これを分析することで、顧客が今どのような課題を抱えているのか、市場でどのようなニーズが高まっているのかを把握できるのです。

具体的な活用方法としては3つ考えられます。

  1. リスティング広告を試験的に運用し、検索キーワードのデータを集める

Webマーケティングの第一歩として、リスティング広告を活用し、ターゲットとなる検索キーワードの傾向を把握することが重要です。例えば、「〇〇加工」「△△部品」「□□のトラブル対策」といったキーワードがどの程度検索されているかを分析することで、市場の関心度を明確にできます。

  1. 市場ニーズを可視化し、新たな製品・サービスを企画する

検索キーワードのデータを分析することで、どの分野に対する関心が高まっているのかを可視化できます。例えば、「樹脂加工 精度向上」といった検索が増えている場合、それは**「より精度の高い加工技術や設備が求められている」**という市場のサインです。

  1. 自社の強みとマッチするニーズに集中投資する

リスティング広告で得た検索データを活用し、特に反応が良いキーワードを分析することで、自社の強みとマッチする分野に的を絞ることができます。例えば、「金属加工 小ロット対応」の検索が多い場合、それに特化したページやサービス紹介を強化することで、問い合わせを増やすことが可能です

このように、Webマーケティングを単なる広告ではなく、市場調査や商品戦略のヒントとして活用することができます。


LP(ランディングページ)はアクションを起こしやすくする

キーエンスのWebサイトは、シンプルかつCTA(コール・トゥ・アクション)が明確な設計になっています。これにより、訪問者が迷わず問い合わせや資料請求をする導線が作られています。

一方、多くの中小企業のWebサイトは製品の仕様説明は多いが、問い合わせの導線が分かりにくく、「どんな課題を解決できるのか?」という視点が不足していることが多いです。

改善のポイントとしては3つあります。

  1. LPの目的を明確にする
    • 「製品を知ってもらうページ」と「問い合わせを増やすページ」を分ける
  2. CTAを強調する
    • 「今すぐ問い合わせる」「無料相談はこちら」など、明確なアクションを促すボタンを配置
  3. 課題解決型のコンテンツを追加
    • 「○○の加工でお困りの方へ」といった、ユーザーの悩みに共感する内容を加える

これで、訪問者がスムーズにアクションを起こせる設計にすることで、問い合わせの数を増やすことが可能になるでしょう


Webマーケティングデータを営業活動に活かす

キーエンスは、Webから得られたデータをリアルな営業活動と結びつけていると思われます。

例えば、リスティング広告やWebサイトの分析を通じて、どの業種のどのエリアで関心が高いか?、どんな悩みを持ったユーザーが多いか?、どのキーワードが最もクリックされているか?といったデータを収集し、営業担当者にフィードバックされているのではないでしょうか。

中小企業でも、これを応用し、以下のように活用できます。

  1. 問い合わせのデータを営業チームと共有し、優先度の高い顧客にアプローチする
  2. Web上でよく検索されるキーワードを基に、営業トークの改善を行う
  3. 地域ごとの検索データを分析し、狙うべき市場を明確にする

このように、Webマーケティングを単なる「広告」ではなく、「営業戦略の一環」として活用することで、より効果的な営業活動が可能になります。

さいごに

今日の話を活かし、自社のWebマーケティングの見直しを進めてみてはいかがでしょうか?弊社でもリスティング広告のアドバイスができます。毎月5社まで30分の無料Zoom相談も受け付けております。

ご興味のある方は下記のリンクからお問合せ下さい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です