三恵金型工業の倒産から学べる事は何か?

1. プラスチック成形用金型製造会社の倒産

超モノづくり部品大賞を受賞する実力企業

今日は、富山県南砺市に本社を構え、業界内で長年にわたって高い評価を受けてきたエスケー管財(旧三恵金型工業)の倒産についてお話ししたいと思います。このニュースを聞いて、「あの三恵が?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。金型業界に携わる方にとって、これは決して他人事ではありません。

三恵金型工業は、1966年に創業してから半世紀以上、プラスチック成形用金型の製造に特化してきました。1970年に法人化し、累計で10,000型以上の金型を製作。自動車部品、家電、住宅設備など、多岐にわたる分野で活躍してきた企業です。技術力の高さは折り紙付きで、「超モノづくり部品大賞」をはじめとする数々の賞を受賞してきました。


オンラインサービスにも積極的だった

それだけではありません。三恵金型工業は、ただの製造業者にとどまらず、「プラスチック金型 修理・メンテナンスナビ」というオンラインサービスも展開。他社製や海外製の金型修理にも対応し、全国各地で迅速に対応できる体制を整えていました。さらに、リバースエンジニアリングを活用して新たなサービスを提供するなど、デジタル分野にも力を入れていました。


負債総額7億7800万円で破産

でも、そんな企業が、なぜ倒産してしまったのでしょうか。2024年7月、資金繰りの悪化により事業を停止し、最終的には負債総額7億7800万円で破産手続きに入ったのです。この出来事は業界内に大きな衝撃を与え、多くの同業者が「うちも気をつけなきゃ」と危機感を抱くきっかけになったのではないかと思います。

この記事では、三恵金型工業の倒産を単なる失敗談としてではなく、そこから学べる教訓としてお話しします。同じような状況に陥らないために、どんなヒントを得られるのか。一緒に考えていきましょう。


2:倒産の背景と原因分析

さて、三恵金型工業がどんな道を歩んできたのか、もう少し深掘りしてみましょう。この会社は、自動車部品や家電、住宅設備など、多岐にわたる分野で金型を製作していました。その技術力と品質は業界内でもトップクラス。ピーク時には年商11億5000万円を達成していたんです。

でも、そんな成功企業が、どうして倒産に追い込まれたのか?ここからはチューリップテレビの記事を参考に想像を交えながら考えていきましょう。


外部要因:市場の激変

まず、大きな影響を与えたのが、外部環境の変化ではなかったでしょうか。

  1. 顧客の海外移転
     主要な取引先だった自動車部品メーカーや家電メーカーが、生産拠点を次々と海外に移しました。その結果、国内の金型需要が大幅に減少。2023年(令和5年)9月期の売上高は約3億3800万円にまで落ち込みました。
  2. 激しい価格競争
     さらに、日本市場には安価な海外製金型が流入。国内メーカーは、コスト構造の違いから価格競争で苦戦を強いられるようになりました。特にプラスチック金型の分野では、価格が重視される場面が多く、高コストの日本製品は厳しい状況に追い込まれました。
  3. 半導体不足による需要低迷
     近年の半導体不足が金型業界にも影響を及ぼしています。自動車業界をはじめとする多くの製造業が減産を余儀なくされ、それに伴い金型の需要も減少したのも影響されたのではないでしょうか。

内部要因:経営の課題が深刻化

外部環境だけでなく、内部にも問題があったと考えられます。

  1. 長期間の赤字経営
     三恵金型工業は、業績悪化が続き、6期連続で赤字を計上していました。これだけの規模の会社となれば、スポンサーを探したり、M&Aを模索するなどの動きもあったと思われますが、救済が困難と判断されたのでしょうか。
  2. 新規営業の限界
     新たな顧客を開拓しようと「プラスチック金型 修理・メンテナンスナビ」のような立派なソリューションサイトを立ち上げたものの、大きな成果を上げることができなかったようです。
  3. 資金繰りの悪化
     最も致命的だったのが資金繰りの問題です。売上不振が続き、原材料費の高騰から採算性も悪化、赤字が続き債務超過に陥りました。これは当然、メインバンクと思われる北國銀行からの融資もストップします。そのため資金繰りが益々困難となったと思われます。

複合的な要因が引き起こした危機

結局のところ、三恵金型工業の倒産は、これらの外部要因と内部要因が複雑に絡み合った結果と言えるでしょう。市場環境の変化に迅速に対応できなかったこと、そして内部の財務体質を早期に改善できなかったことが、経営を圧迫した要因と考えられます。

つまり、企業の「技術力」や「歴史」があっても、それだけでは経営の安定を保証できないという現実です。


3:技術力が高くても避けられないリスク

さて、技術力に自信がある会社ほど、「うちは大丈夫」と安心しがちです。でも、三恵金型工業の事例が示すように、どんなに技術が高くても、それだけで会社の存続が保証されるわけではありません。


技術力だけでは乗り切れない現実

三恵金型工業は、自動車部品や家電、住宅設備など、さまざまな分野の金型を製作してきました。その中でも、「多段式射出成形型」などの高度な技術開発にも挑戦していました。これだけ聞くと「技術さえあれば安泰」と思うかもしれません。でも、現実は違いました。

市場が変われば、いくら優れた技術を持っていても、それをどう活かすかが問われます。三恵金型工業も、顧客のニーズや市場環境の変化に追いつくのに苦労していたようです。


業界全体の斜陽化

次に注目したいのは、業界全体が抱える「斜陽化」の問題です。プラスチック金型業界では、コストの安い海外生産が主流になりつつあります。特に中国や東南アジアの企業は、日本の企業よりも圧倒的に低コストで製造を行えます。その結果、多くの日本企業がその波に飲まれてしまっています。

さらに、3Dプリンターの台頭もこの業界にとっては脅威です。これまで金型が必要だった製品も、今では短納期で小ロット生産が可能になり、金型を使わずに済むケースが増えてきています。


大手企業でも油断は禁物

「うちは大手だから」と安心していませんか?組織が大きいと、新しいことを取り入れるのに時間がかかることもあります。しかし、三恵金型工業の例が示す通り、規模に関係なく、変化に適応できなければ、経営の安定は難しいのです。


4:教訓と学び

さて、ここまで三恵金型工業の倒産について、その背景や要因を詳しく見てきました。この事例は、単に過去の失敗談として片付けるのではなく、これからの経営をどう改善し、強化していくかを考える貴重なヒントになります。


市場変化に対する柔軟な対応

市場環境は常に変化しています。三恵金型工業も、長年の技術力に自信を持っていたものの、海外への生産拠点移転など、時代の変化に適応することが難しかったようです​。また所有していた設備リストを見ると、牧野フライス製作所の放電加工機 EDNC-64、マシニングセンタ FNC106-A20など30年前~40年前のものが多く、最新の機械設備への投資も不十分だった可能性があります。

実際に、ヤフーしごとカタログの口コミを見ると、

「古い会社なので設備がやはり古く労働環境もわるい。」
「設備も古く労働環境もいいとはいい難い。非常に汚い。」

とあるように、従業員から設備の古さに不満が見られたようです。


財務の健全化と資金繰りの安定

財務状況の悪化は、企業の体力をじわじわと奪います。三恵金型工業も、資金繰りの悪化が倒産の引き金となりました。このような事態を回避するためには、早期に財務体質を見直し、キャッシュフローの安定を図ることが重要です。

例えば、政府が推進する「ものづくり補助金」を活用して、最新の五軸加工機、複合加工機などへの投資を行った企業は、財務状況を改善し、競争力を高めているようです。また、遊休設備の売却などで資金を調達し、経営資源を効率的に活用することも有効です。


人材育成と技術継承の重要性

企業の競争力は人材にかかっています。特に製造業では、技術の継承が長期的な成長を支える柱となります。が、実際には富山県の南砺市というローカルな地域で採用も難しく、従業員の高齢化が進んでいたと思われます。また長期間の業績低迷により、社員のモチベーションも低かったように思われます。

実際にヤフーしごとカタログの口コミを見ると、

「社員が立ち話ばかりしている。」
「一日中おしゃべりしている社員が一定数存在する。」
「結果わざと残業をして残業代を稼ぐ社員も、存在する。」
「一部の古株が職場や機械や備品等を自分の物のように扱い社内の整理整頓がなっていない。」

と、一部社員のモラルが低下していた様子がうかがわれます。


まとめ

倒産という苦しい経験も、そこから得られる教訓を活かすことで、未来の成長の糧となります。市場の変化に対応し、財務の健全化を図り、人材を育成していくことが、これからの企業経営に求められる姿勢です。

また時代への変化に対応するため、自動化、省力化などの設備投資もおこなうなど最新設備への投資も考える必要があります。

もし、設備更新などで資金需要が発生したら、ぜひ弊社の機械買取サービスをご検討ください。御社の成長のお役に立てると思います。


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